はじめに 
序文
登場人物 序章 第一章  
紅黒放浪記 年表 地図  
TRPG system EIN  〜火音帝国編〜
  火音帝国リプレイ 第壱編 すべての夢はうたかたの

 第一章
 聖業869年 仲秋
 
 妖なる夢の夜
 
 教えてくれ。
 与えてくれ。
 導いてくれ。

 俺に生き方を教えてくれ。
 俺に使命を与えてくれ。
 俺をその先に導いてくれ。

 自分では何も見つけられない。
 だから、与えてくれ。
 愛するものも、守るべきものも。
 お前が、俺に与えてくれ
 


 八年という月日は、俺に特別な感情を抱かせるには充分過ぎる時間だった。
 幼き日、忍びであった父に手を引かれて、俺はこの小さな山村に足を踏み入れた。理由までは知らないが、何者かに追われていた父は、その道中に俺をかばって深手を負い、やっとの思いでこの厘忌の村の外れにある闇照道の杜に辿り着いたのである。しかし、父はその傷が元で他界してしまい、ただ一人の肉親である父を失って、俺はどうすればいいか分からず途方に暮れていた。
 幸い、闇照道の祭主であった理源という人物が俺を保護してくれたものの、俺が唯一感情を表すことが出来た相手はもはや亡く、忍びとしての父を模倣することでしか、その時の俺は自我を保てなかったのである。
 そして、俺は極端に無表情な子供になった。
 だがそんな俺にさえ、彼らは手を差し伸べてくれた。ほとんど感情を面にしない俺に、時折腹も立てていたが、それでも彼らは俺を突き放そうとはしなかった。
 初めて得た、大切な友人達。
 しかし、物心ついた頃には既に父と二人で追っ手から逃れていた俺には、彼らとどう接して良いのかなど全く分からなかったのである。父を真似たように、彼らの友人への態度を模倣しようかとも思ったが、どうにも上手くはいかなかった。恐らく、そこに伴う感情が理解出来なかったためだろう。だから、俺は無表情であり続けるしかなかった。
 けれど、そんな俺の戸惑いなど知る由もなく、彼らは共に笑い、長く穏やかな時を過ごした。
 都からやってきた風雲児、皇零氷がもたらした西方の文化にすっかり毒された帛絽は、食後の茶をコーヒーに変え、凰珠などは着物を捨ててボンテージ・ルックに身を包んだ。肌を露にしたそのあられもない格好に、穂桷は眉をひそめ、零氷や帛絽は素直に喜んでいたが、本人がそういった周囲の反応を気にしている様子はなかった。もう少し幼い頃には、周囲の目を気にして怯えているところがあった凰珠だが、零氷達と出逢い、本格的に剣術を学び始めた頃から、そういった気の弱さは影を潜めているようだ。
 凰珠だけではない。皆が、自分の立場を確立し始めていた。零氷や景房には初めからそういった自覚があったのだろうし、穂桷も幼い頃から坊主を目指して修行にいそしんでいた。帛絽も、何やかや言いながら闇照道を真剣に学び始めている。
 俺だけが、確固たる決意もなく、父の面影を追い続けていたのだ。
 忍びとしての修行は嫌いではなかった。一歩でも亡き父に近付きたいという思いも本物だった。
 けれど、俺は忍びというものをイメージで捉えているに過ぎず、またそのイメージに近付くために、安易に主君を定めようとしていたのだ。
 皇零氷を、俺の主として。
 零氷には人を惹きつける才がある。そして、人を使う才がある。この男ならば、俺を忍びとして使ってくれる。
 俺が零氷を主と定めたのは、ただそれだけの理由だった。
 だが、他にどんな道があったろう?
 自身を確立することも出来ぬ俺に、一体何を決めることが出来たというのか?
 誰に笑われても構わない。
 何も考えず、ただ主の命に従って忠実に動けばいいのだ。
 俺は、忍びなのだから。
 皇零氷の治める小さな国に唯一の『影』なのだから。
 ――しかし、永遠に続くことを願ってやまなかったその日々の終わりは、あまりに唐突に訪れた。
 妾腹でありながらも嫡流に名を連ねる零氷と、丹玄の名門須藤家の嫡子である景房が、共に都に戻らねばならなくなったのである。齢十七を迎えた零氷も、いよいよ城に上がる時が来たのだ。
 その別れを単純に惜しめるほど俺たちは子供ではなかったし、また彼らが去ることに何の感慨も抱けぬほど、八年という月日は短くなかった。
 それでも俺たちが一様にいつもと変わらぬ顔で彼らとの別れを迎えたのは、零氷の妹である雪苗がこの厘忌の村に残るという事実が、これが完全な別離ではないということを証明していたからだろう。
 高宮家に駆り出され、都に持ち帰る彼らの荷物を運び出しながら、俺たちはしばしの別れを笑顔で迎えた。
 


語り部

 それでは、記念すべき火音帝国リプレイの第1回を始めたいと思います。
舞台は火音帝国と呼ばれる、十五の藩を抱えた天帝の治める巨大な国。とは言え、その天帝の権威ははるか昔に失墜し、今ではその補佐役であるはずの『将軍職』こそがこの国の実権を握っています。
 諸国はその『将軍職』を巡り水面下の争いを繰り広げている訳なんですが、主人公諸君が現在いる場所は、そんな政権争いとは全く無関係な寂れた山間の村です(笑)。
 君達の置かれている状況については序章で説明した通りですが、実際のプレイに入る前に、皆さんには自己紹介をしてもらいましょうか。Aさんからどうぞ。

主人公A(以下凰珠/おうじゅ)
 は〜い、あたし凰珠! とってもぷりちぃな十七歳! 亜獣ならではの猫耳と尻尾がチャームポイントさ!

語り部
 あれ? 凰珠はボンテージ着てるの?

凰珠
 うん。凰珠はかぶきものだもん。

主人公B(以下穂桷/ほずみ)
 私はそんな凰珠の姿に眉をひそめる真面目な僧侶、穂桷だ。今年で十九歳。立派な僧侶となって苦境に立たされている人々を救うぞ。

主人公C(以下帛絽/はくろ)
 面白みのない奴。  俺様は偉大な闇照道の式打ちで、帛絽だ。十八歳、独身。

一同
 当たり前だろ(笑)。

帛絽
 いつか火音帝国にその名を轟かせる大術者になる予定だぜ!

語り部
 はいはい。では最後にDさん、どうぞ。

主人公D(以下五十里/いかり)
 ……五十里。十八歳、這鱗の忍びだ。

語り部
 ……寡黙だな、おい(笑)。
 とまあ、こういう面子で物語は繰り広げられることになります。みなさん、よろしいですね?

一同
 お〜う!
 


語り部
 さて、君達は今、高宮家に駆り出されて引っ越しの手伝いをしています。荷物を運ぶ君達の横では、景房もせっせと働いていますね。一方零氷はといえば、帛絽に絡んでいる。
「お前にはこんな田舎がお似合いさ」
 そんな憎まれ口を叩きつつも、零氷は少し淋しそうですね。

帛絽
「城の方じゃ、野性的だから目立つんじゃないのか? それに、城は窮屈だって聞いたぜ」

語り部
「まあな。だが、その内迎えに来てやるよ。お前ら全員な」

帛絽
「どうだかな……」

穂桷
「では、なるべく早くしてもらいたい。私達も、いつまでもここにはいないだろうから」

帛絽
「そうだ。俺たちはいつまでもこんな村でくすぶっているような器じゃないんだからな。お前らが来なければ、こんな村とっくに出てたんだぞ」

語り部
「人のせいにするな。人は何かをしようとする時、必ず行うものだ。お前の場合、決心が足りなかったんだ。そういうことだろ」

帛絽
「……ふん」
 いそいそと荷物を持って去っていく。

語り部
 では、そこで景房が穂桷を呼びますね。
「我々二人はこれから登城することになります。しばらくは帰って来ることが出来ないでしょう。そこで、あなたに雪苗様の警護をお願いしたいのです」

穂桷
「分かった」

語り部
 景房は軽く頭を下げますね。

穂桷
「お前こそ気をつけろ。城では色々あるだろうからな」

語り部
「私は大丈夫。ただ、零氷が心配です。あのような性格ですからね。――しかし、零氷は私が必ず守ります。たとえ私の命が……」

穂桷
 大袈裟に溜め息をつく。
「一つ、お前に言って聞かせねばならないようだな」

語り部
「何ですか?」

穂桷
「いいか、景房。お前の命を投げ打ってでも、零氷を守りたいという気持ちは分かる。しかし、一番初めに考えねばならないのは、二人が生き残ることだ」

語り部
「分かっていますよ。この八年間、あなたには嫌というほど言われ続けてきましたからね」
 そう言って、景房は少し笑います。
「それに、あの言葉の通り、零氷は必ずここに戻ってきます」

穂桷
「ではそれまで、私が雪苗殿をお守りしよう」

語り部
「お願いします」
 そのまま、景房は荷物を運びに行きますね。
 一方、他のみんなは彼らのそんな様子に気づくこともなく、引越しの手伝いをしています。

凰珠
 荷物を運びながら零氷に話し掛ける。
「ねえ、零氷」

語り部
「何だ凰珠」

凰珠
「どのくらいで帰ってくるの?」

語り部
「そうだな〜、やっぱりある程度の武勲を立てなきゃいけないからな。どのくらいになるかは分からん」

凰珠
「(涙ぐんで)淋しくなるね」

語り部
「大丈夫だ! お前は俺の妾になるんだからな」

凰珠
「まだそんなこと言ってんの〜?」
 とか言いつつ、顔を赤らめてる(笑)。

五十里
 その光景に何となくムッとして、影から零氷を睨みつける(笑)。

語り部
 もちろん、零氷はそんな視線に気づきもしないんだけど(一同苦笑)。なおも凰珠に言いますね。
「冷たいなあ。あの日の約束を忘れたのか?」

凰珠
「覚えてないよ〜。それにどうせ妾になるなら、零氷なんかより景房兄ぃの方がいいもん。大人だし、落ち着いてるしさ」

語り部
「(残念そうに)……お前なら景房を任せてもいい」

凰珠
「やった! お墨付きもらっちゃった」

穂桷
「ならば凰珠」

凰珠
「ん?」

穂桷
「お前も少し、礼儀作法というものを学ばなければいけないな」

凰珠
「うっ……。は〜い」

五十里
「そういうのを墓穴って言うんだ」

凰珠
「うるさいな〜」

語り部
 そんな会話を聞いて、零氷は笑い声を挙げますね。
「俺はすぐに戻ってくるつもりだ。それまで皆、頼むぞ。それに帛絽、お前も少しは闇照道の術を磨いておけよ。結局、魔人と名高い理源には会えず終いだったしな」
 帛絽の師である理源さんは、何かと理由をつけて零氷と会おうとはしませんでしたね。大抵は仮病とか二日酔いとか、そういう理由でしたけど。

帛絽
「まあ、その内会えるだろ」

語り部
「そうだな。……それじゃ、みんな達者でな」
 というわけで、皇零氷と須藤景房はお城へと登城していきました。

穂桷
 そう言えば、私と凰珠の保護者である沢庵和尚はお寺にいるんでしょうか?

語り部
 最近は姿を見ていませんね。

穂桷
 あのクソ坊主!

五十里
 二人を見送ったあとにポツリと呟く。
「八年前はこんなに静かだったんだな」

凰珠
「もっとうるさかったと思うよ。みんなガキだったから」

五十里
「確かに、帛絽が帛絽だったからな」

帛絽
「何が?」

五十里
「口より先に、拳で語ってた」

帛絽
「うるせえな〜」

穂桷
「その辺にしておけ。一番淋しいのは帛絽だったりするからな」

凰珠
「そうだね。喧嘩相手、いなくなっちゃったもんね〜」

五十里
「いや、最近帛絽も落ち着いてきたからな」

穂桷
「(意外そうに)落ち着いてきたのか?」

凰珠
「ちょっと」(ひどい言われようだ……)

帛絽
「あ〜あ、景房がいなくなって淋しいな〜」

 


 胸に小さな穴があいたような、奇妙な感覚。
 これが『淋しい』ということなのだろうか。
 父には教えられなかった感情だが、父を失ったときの喪失感にも似ていた。
 二人の後姿を見送って素直に涙ぐんでいた凰珠も、そして杜に帰ってから何となく無口になっている帛絽も、自分の感情に正直だ。だがそうあれるのは、その感情を彼らが『知っている』からなのだ。
 二人が羨ましかった。
 これから先、ともすれば何年もの間、彼らがそんな風に淋しさを面に表す度、自分は同じことを思うのだろうか。
 ――だが、そんな俺のささやかな悩みを知る由もなく、事件は訪れたのだ。

 
 

語り部
 零氷と景房が都へ向けて出立した翌日のこと。闇照道の杜の方に村人がやって来ますね。
「大変だ! 大変だ〜!」

帛絽
「どうした、どうした」

語り部
「これは帛絽さん。変な化け物を見たんで……」

帛絽
「変な化け物?」

語り部
「はい。目が赤くギラギラとした、猿みたいな奴なんですけど」

帛絽
「もしやそれは妖怪か? よし、案内しろ」

語り部
「いや、ただ見かけただけなんで。ここは理源さんに一言……」

帛絽
「いい、いい。あんな奴は寝かせておけ(寝てるのか?)」

語り部
「しかし、こんな時は理源さんが一番頼りに……」

帛絽
「俺の方が頼りになる」(一同 笑)

語り部
「す、すみません」

帛絽
「よし。このまま穂桷のところにも知らせろ」

語り部
「分かりました〜」
 というわけで、寺の方。
「大変だ! 大変だ〜!」

凰珠
「あ。……どうしたの?」

語り部
「変な化け物が現れたんだよ」

凰珠
「変な化け物だってよ、穂桷兄ぃ」

穂桷
 テコテコと廊下を歩いてくる。
「どうしたんですか?」

語り部

「変な化け物が出たんですよ。闇照道の杜に連絡に行ったら、寺にも知らせるように言われまして」

穂桷
「(冷静に)それはどこで?」

語り部
「あっしが裏山に薪を拾いに行った時です。慌てて牛を置いて来てしまっただ」

穂桷
「では、調べてみましょう。凰珠、準備しなさい」

凰珠
「は〜い」

穂桷
「まずは帛絽たちのところに行くか」

語り部
 では、凰珠と穂桷は村人を連れて杜までやって来ますね。

五十里
 聞いた話を手紙に書いて、理源さんの枕元に置いておく。

穂桷
「準備はいいか?」

帛絽
「おう!」

穂桷
「見間違いかも知れないが、油断は禁物だからな」

語り部
 ちなみに君達は妖怪を見たことなんかありませんよ。勉強したから知識はあるけどね。

帛絽
 何だ、見たことないのか。

穂桷
 「まあ、最優先にしなければならないのが……」

語り部
 「オラの牛〜!」

穂桷
「そうですね」

帛絽
「いや〜、無理じゃねえか」

語り部
「そ、そんなあ」

凰珠
「出来るだけ無事に連れて帰るからね」

語り部
「頼んだよぉ」

穂桷
「ただの猿かも知れませんしね」

帛絽
「それもあるかな。とりあえず行ってみようぜ!」


 


 
 俺達は早速準備を整え、村人の示した場所へと向かった。
 正直なところ、俺は村人の言葉を信じてはいなかった。人間の目など当てになるものではない。大方、柳の枝が幽霊に見える、という類の話なのだろう。
 こんなことで駆り出されるのは迷惑極まりなかったが、責任感の強い穂桷がすっかりやる気になっていたのと、帛絽が妖怪に出会えるかもしれない可能性に胸を躍らせているところに水を差すのも悪いように思えて、俺はおとなしく彼らに従ったのだった。
 早々にただの猿であったことを証明し、牛を連れ戻さねばなるまい。
 しかし、そんな俺の思いを嘲笑うかのように、それは声も立てずにそこに横たわっていた。
 



語り部
 君達が村人から聞き出した場所までやって来ると、そこにはところどころ食いちぎられた牛の死骸が転がっている。

凰珠
「……ただの猿、なのかな」

穂桷
 歯形を調べてみる。

語り部
 それじゃあ、【行為判定】を行ってみよう。〔能動感知〕で判定してみて。

穂桷
 〔能動感知〕の技能は修得していないから、『+能力値』の『意志』のみで判定か。

語り部
 そうだね。穂桷の『意志』は20。d%で20以下が出れば成功だよ。d%は、10面体ダイスを2つ振って、一方を十の位、もう一方を一の位とするんだ。

穂桷
 よ〜し……(コロコロ、ダイスを振る音)。ええと、ダイス目は54。失敗か〜。


 ここで穂桷が行った判定を【行為判定】と言います。穂桷が『歯形を調べる』と言ったので、語り部は〔能動感知(様々なものを探したり、気配を探ったりするための技能)〕を指定したわけです。
 【行為判定】は、語り部が指定した技能ごとに決められている『+能力値』を技能値に足し、d%でその数値以下を出せば成功となります(d%とは、1〜100までの乱数を求めることで、この際に十の位が0、一の位が1の場合は1、両方が0の場合は100となります)。
 ただし穂桷が行ったように、技能を修得していなくとも【行為判定】を試みることは出来ます。しかし技能を修得している者に比べて、その成功確率は大変低くなってしまいます。
 案の定、穂桷は何の手がかりも見つけることが出来ませんでした。


語り部
 よく分からないね。

凰珠
 私も、周りに残ってる足跡とか調べていいかな?

語り部
 いいよ。調べる人は〔能動感知〕で判定してください。

凰珠
 あれ〜、せっかく技能を持ってるのに、ダイス目が最悪。87で失敗しちゃった。

帛絽
「こそこそしないで、出てきやがれ!(失敗したらしい)」

語り部
 特に気になるものは見つけられないね。辺りは静かなものだし。

穂桷
 「無闇に探し回っても見つからないだろう。これは餌が必要かも知れないな」

五十里
「(もったいぶって)足跡を調べればいいんだな?やってみよう」
 〔能動感知〕でいいんだよね? 当然、俺は忍術の〔風読みの術〕で判定。成功確率は【基本成功率】が19%、技能値が20%、さらに『忍道具』を持っているので+10%。合計49%もあるもんね。
 (コロコロ)……ダイス目は39。成功だ!これで〔風読みの術〕の技能にチェックがついて、カードも1枚交換できるぞ。


 ここで五十里が行った『チェック』とは、プレイが終了した時点で行うキャラクターの成長に関わる大切な作業で、この『チェック』がついていないと、技能値を成長させることが出来ないのです。さらに、『チェック』がついていなければ、それに関わる能力値も成長させにくくなってしまいます。
 また『カード』とは、戦闘においてキャラクターの行動を左右するもので、本システムでは一人一組ずつトランプを用意し、それを戦闘に用います。自分に有利なカードを手元に揃えておくことによって戦闘を優位に進めることが出来るため、カードの交換は大変重要なことなのです。


語り部
 その足跡はこの辺りだけで、どこかへ続いているということもないですね。

凰珠
「やっぱり、餌を用意した方がいいのかな?」

穂桷
「食料が目当てならそうだろう」

凰珠
「死んだのは食べないんだよね……」
 死骸を指差す。

五十里
 ついさっきまで食べていた様子はありますか?

語り部
 そうだね。死骸は結構温かい。鈍器などで殴られたような跡もあるよ。

凰珠
「……殴られてるの?」

帛絽
「何か、よく分からなくなってきたな」

語り部
 そうですねえ。この状況を見て予想できるかどうか、〔妖怪知識〕で判定してもらおうかな。直接見たわけでもないし、難易度−10%のペナルティをあげよう。


 火音帝国には、時折『妖怪』と呼ばれる化け物が姿を現すことがあります。それらの妖怪についてどれだけ詳しいかを示すのが、この〔妖怪知識〕という技能です。
 また難易度とは、判定の際に語り部が与えるボーナスやペナルティのことで、簡単ならばボーナスが、難しければペナルティが与えられることになります。
 ここでは、状況以外に判断材料がないため、−10%のペナルティを設定しました。


穂桷
 ペナルティなんかいらないって。〔妖怪知識〕20%に『記憶』が19。難易度が−10%だから、成功確率は29%しかないよ。……お、26で成功。

帛絽
 俺様は『妖怪絵巻』を持ってるから、判定に+10%。つまりペナルティと相殺だな。成功確率は32%で、ダイス目は78。失敗だ〜。

語り部
 では穂桷は、妖怪の中には猿の群れを従え、それを使役するものがいると聞いたことがある。そうして妖怪に操られるものには、異様に知恵が働くようになるものも現れると言われ、集団で人を襲ったり、自分を操る妖怪のために人をさらったりするともされていますね。また、妖気に当てられるためか、その目は赤く光るとも言われている。

穂桷
「ということがあったな」

帛絽
「習ったような気がするな」(一同 笑)

穂桷
「これは少し気をつけた方がいいかも知れない。辺りを調べてみよう」

一同
「お〜う!」
 


 俺達はその現場を中心に周囲を調べてみたが、結局手がかりとなるものは何もなかった。次第に日も傾き、手元を見るのもおぼつかなくなってくる。いい加減疲れ切った頃になって、ようやく穂桷はため息をつき、諦めたようだった。
 穂桷は完全に妖怪の仕業と決めてかかっているようだが、猿の中に多少頭の利く奴がいただけかも知れない。それよりも今は、これ以上村人のために俺達が危険を冒して裏山にいる理由など、何もないように思えて仕方なかった。
 這鱗だからと不気味がる奴らに、俺は何の感慨もない。それでも穂桷達に付き合ってここまで来たのは、村の奴らではなく、その村人のために心を痛める友人を助けたかったからだ。
 だから、穂桷の一言には思わずため息をつかずにはいられなかった。
「一旦、戻ろう」
 まだ捜索を諦めるつもりはないらしい。この責任感の強さは、坊主としては当然のことなのかも知れないが、時にはそれがうっとうしくもなる。
 穂桷が思うほど、村人は穂桷を頼りにしてはいないのに。
 喉元まで出かかったその言葉を飲み込み、俺は皆の後について歩き始めた。
 相手がどうやら妖怪であるらしいということで、そちらの勉強をしてきた穂桷と帛絽が中心になって作戦を立てる。
 しかし、闇照道の杜まで辿り着いたときに決まっていたのは、『理源さんの知恵を借りよう』ということだけだった。
 


語り部

 杜に戻ると、眠そうな顔の理源さんが帛絽を見て言いますね。
「おい、飯はどうした、飯は」

帛絽
「そんなことより、妖怪が出たんだよ」

穂桷
「それで、理源さんのお知恵をお借りできればと思いまして……」

語り部
「ふうむ」
 理源はちょっと腕を組むと、君達を見回します。
「わしは、お前達にあえて試練を与えよう。『獅子が我が子を千尋の谷に突き落として、殺しちゃった』ということもあるだろう」(一同 笑)

凰珠
「殺しちゃダメじゃん(笑)!」

帛絽
「もういい、お前に聞くことはない! 飯は自分で作って食え!」
 そのままドタドタと灯火具だけ持って出て行く。

五十里
 あ〜あ……。追いかけます。

穂桷
 結局こうなるのか。
「とりあえず、村の人にかがり火を焚くように言って、外に出ないようにしてもらおう」

語り部
 では君達の指示どおり、かがり火が焚かれる。ちなみに、この村の自警団は君達がやっているようなものですから。

凰珠
 あれ? そう言えば、高宮の屋敷って離れてるんだっけ?

語り部
 そうですね。結構距離はありますよ。

凰珠
「屋敷にもかがり火焚いた方がいいんじゃないの?」

語り部
 屋敷には一応警護の者がいますけどね。

凰珠
 いるならいいか。

穂桷
 いや、言うだけ言っておかないと……。

語り部
 連絡するとかがり火が焚かれますよ。

帛絽
「じゃあ、俺達は行こうぜ」

穂桷
「何か餌になるものを持っていかないとな」

凰珠
「鶏とかじゃダメかな? 大切な家畜だけど……」

穂桷
「そうだな。餌は私達で我慢してもらおう」
 歩き出します(笑)。

語り部
 どちらに行かれるのでしょうか?

穂桷
 裏山の方に。

語り部
 では、君達は裏山へとやって来た。う〜ん、ここは〔能動感知〕かな?

凰珠
 〔遭遇〕じゃダメ?

語り部
 あ、そうか。偶然会えるかどうかだから、〔遭遇〕ですね。みんな〔遭遇〕で判定してください。

凰珠
 技能値が20%と、『武運』が20。合計40%か。(コロコロ)やった、11で成功!

穂桷
 〔遭遇〕なんて技能は持ってないから、能力値のみで判定。お、07で成功した。

帛絽&五十里
 失敗。

語り部
 成功した凰珠と穂桷は歩いている途中、木々の間を飛び跳ねる影を発見する。どうやら猿の群れのようだね。

穂桷
「猿の群れだ……」

語り部
 その先頭を行く一匹が、どうやら女性を抱えているようだ。そのまま、山の奥へと向かっているようですね。

五十里
「仕方ない、先に追わせてもらう」
 枝なんかを折ったりして、目印を残しながら追いかける。

語り部
 では、〔猿飛びの術〕と〔神脚の術〕で判定してください。

五十里
 両方とも成功。優秀、優秀。

語り部
 では、君は追いつくことが出来ますね。抱えられている女性はまだ若く、凰珠くらいの年齢でしょう。群れの中の十匹ほどが、君に気づいて向かってくるよ。

五十里
 ええ〜。それをかいくぐって……。

語り部
 無理、無理。いきなり個人戦闘なんかするつもりはなかったんだけどなあ。ま、覚悟してね(笑)。

五十里
 そ、そんなあ(泣)。



 敵を捕捉したまでは良かったが、少しばかり読みが甘かった。まさか、ここで猿の群れが俺に向かってくるとは思わなかったのだ。村の娘を抱えた猿の姿はもはや見えなくなっている。一刻も早く追わねばならない。
 そのためには、血走った目で俺を睨みつけるこの猿どもを一掃せねば。群れた動物など、頭を叩けばいいはずだ。
 だが―― 一体、どれが頭だというのだ?
 どう見ても、この猿の群れには率いているボス猿がいるようには思えない。その割に、猿達は驚くほど統率の取れた動きを見せているのだ。案外、妖怪に率いられているというのは本当なのかも知れないな。
 そう頭の隅で考えながら、俺は目の前の獰猛な獣達に目を走らせた。こうなれば、片端から倒していくしかない。
 腰に差した忍刀を抜き放つ。訓練では幾度となく振り回してきた父の形見であったが、実戦で用いるのはこれが初めてだ。
 十匹の猿達は、一斉に襲い掛かってくる。右に左にそれをなぎ払いながら、俺は確実に敵の息の根を止めた。
 二体、三体、四体……。屍を数え上げるたび、俺の体にも奴らの爪が食い込み、牙が皮膚を削り取る。
 そして、八体目の体に忍刀を突き立てた瞬間、俺は背中に鋭い痛みを感じた。
 体の感覚がなくなるほどの、深い傷。
 薄れゆく景色の中で、残り二匹となった猿達が、俺を一瞥して去っていくのが見えた。




語り部
 というわけで、五十里の後を追っていた三人。君達は、木の枝にだらしなくぶら下がっている五十里の姿を発見しますね(笑)。

凰珠
「五十里兄ぃ〜!」

帛絽
「下ろせ、下ろせ」
 〔式神符〕を使って、式神を呼び出すぞ。え〜と、〔式神符〕の技能値が30%、術式の【基本発動率】が12%。合計42%だな。

語り部
 ちょっと待った。〔式神符〕は何枚使うの?

帛絽
 今は4枚しか作ってないから、4枚全部だな。何で?

語り部
 〔式神符〕はね、符の枚数が多いほど強力な式神を作ることが出来るけど、その分【発動判定】にペナルティが発生するんだ。4枚なら−30%。つまり、12%でしか成功しないということだよ。

帛絽
 そんなんじゃ成功しねえよ〜。あ、成功するまで判定すればいいのか。

語り部
 それじゃあ、判定を行う意味がないだろ?だからこういう場合には『チェックなし成功』と言って、特殊な判定方法を用いるんだ。


 『チェックなし成功』とは、戦闘時以外など、時間の制限がそれほど厳しくない状況において、何度も同じ判定を行いつづけることを抑制するための判定方法です。
例えば帛絽の〔式神符〕の場合、【成功確率】は12%となり、d%で12以下が出れば成功です。通常ならこれ以外で効果を現すことはありませんが、『チェックなし成功』の判定方法を用いる場合は、通常の失敗であれば効果を現し、技能のチェックやカード交換を行うことが出来ない、という処理を行うのです。
 なお、『チェックなし成功』の処理を行えるのは【成功確率】が10%以上ある場合のみで、帛絽の〔式神符〕で言えば、これ以上多くの符を使った式神は作れないことになります。


帛絽
 何だ、要はファンブルさえしなければ式神が作れるんだな。(コロコロ)お、11で成功したぞ。

語り部
 では、チェックとカード交換を行って構わないよ。ちなみに式神の容姿は?

帛絽
 狐。名前は古狐と書いてココ。

凰珠
 可愛い〜♪

語り部
 漢字そのままじゃないかよ〜。じゃあ、ココは木の上まで飛んでいくと五十里を下ろしてきます。気絶しているようですね。

帛絽
「何やってるんだよ〜」

穂桷
 急いで〔応急手当〕をする。技能値が20%、能力値は『感覚』だから18、『応急具』があるのでさらに+10%。合計48%か……。よし、23で成功。

語り部
 では30分ほどして五十里は目を覚まします。ちなみに生命は1点に回復しました。

五十里
「うう……。ほとんどは倒したのだが……」

凰珠
「何やってんの〜?」

五十里
「しかし、おおよその方向は分かっている。一直線に追っていけば辿り着くだろう。どうやらさらってきたのは村の娘のようだ」

穂桷
「急ごう!」
 そちらの方へ走り出す。

語り部
 じゃあ〔遭遇〕を難易度−20%で判定して。

凰珠
 う〜、失敗。

帛絽
 そんなの、成功するわけないだろ。『武運』が16しかないのに。

語り部
 【成功確率】は0%を下回ることはないよ。それに、01が出れば必ずクリティカルで成功だし。

帛絽
 そんな確率の低いことがそうそう起こるもんか。ほら、失敗。

五十里
 ……(失敗したらしい)。

穂桷
 ん〜、気合はダイス目に宿る。(コロコロ)よっし、01!クリティカルだ!


 ここで言う『クリティカル』とは『華麗な成功』を意味し、反対に『ファンブル』とは『手痛い失敗』を表します。クリティカルならば大変良い結果が、そしてファンブルならば致命的な結果が導かれることになりますが、これらはチェックやカード交換にも関わります。クリティカルで成功した場合は、通常の成功と同様にチェックを行う他、カードを1枚ずつ2回交換することが出来ます。また、ファンブルの場合は失敗であるにもかかわらず、技能にチェックをつけ、カードを一枚交換することが出来るのです。
 もっとも、いくらチェックやカード交換ができるとは言え、大切な場面でファンブルだけはしたくないものですが……。


語り部
 では、君達は再び遭遇することが出来る。しかし猿達の姿は既になく、女性は木の上で切り裂かれて死んでいますね。

穂桷
「遅かったか……(ため息)。とりあえず下ろしてあげよう」

帛絽
 式神に下ろさせる。

語り部
 ココは女性を下ろしてきますね。女性は近所に住んでいた村人の一人で、凰珠と同じ年頃の娘でした。

穂桷
「(沈んだ声で)一旦村に戻ろう」

凰珠
「う、ん……」

 


 あの娘が死んだのは、俺達のせいではない。
 それなのになぜ、穂桷は涙を浮かべ、帛絽は血がにじむほどに拳を握り締め、そしてかつては亜獣だからとその娘達に苛められていたはずの凰珠までもが、あのように暗い顔をしているのか。
 俺にとってはこの厘忌の村の住人ですら、関わりのない他人に過ぎなかった。引き裂かれ、木の上に亡骸をさらされていたのが例えば凰珠であったなら、俺とて自分の無力を恥じ、仇を討とうと奮起もしよう。
 しかし、所詮あの娘は名を思い出すのも難いような他人である。
 俺達が責任を感じる必要など、何もないはずだった。
 だがそんなことを言えば、俺にとって他人ではない彼らから、一斉に非難を受けるだろう。
 いつもの無表情を装いながら、俺は俺の感情をわずかに嫌悪した。


 


語り部

 君達が村に戻ると、既に明け方近くになっていますね。村の中は騒然としており、皆で行方不明になった村娘を探している様子です。そして、彼女の亡骸を抱いている君達の姿を見ると、その娘さんの両親が駆け寄ってきて、そのまま泣き崩れてしまいますね。

帛絽
「仇は必ず取る!」

語り部
「お願いしますだ〜」

穂桷
「今日から村の方を見回ろう。私達で何とかしなければ……」

帛絽
「分かった」

語り部
 急な葬儀などですっかり夜が明けてしまいますね。葬儀を行うのは自創教の僧侶の仕事なので、住職である沢庵和尚がいない今、それを代行するのは穂桷の役目です。そんなこんなで、君達は徹夜明け。

穂桷
 夜の見回りのために、夕方までは寝てます。

語り部
 では何事もなく夕方になるね。

凰珠
「みんなで呼び子笛持って、村を分担して見回ろうよ」

穂桷
「そうだな」

帛絽
「しかし、どうしてあの娘を連れ去りに村まで降りてきたんだ?猿なんて野生動物だし、いくら群れててもそんなことはしないはずだ」

語り部
 普通に考えればその通りですね。

帛絽
「あの位の年の娘を一か所に集めておいて警護した方がいいんじゃないか?」

凰珠
「でも、年齢とかって関係あるのかな?」

帛絽
「う〜ん、分からんが……」

凰珠
「とりあえず手近なところをさらっただけかもよ」

帛絽
「そうとは思えんな〜。勘だけど」

語り部
 まあ、妖怪は大抵女性をさらうと言いますから。

帛絽
「確かにババアよりも、若い方がいいからな」

凰珠
「(頷いて)それはそうだよね」

帛絽
「いずれお前もババアになるんだぞ」

凰珠
「う……。嫌なこと言うな、帛絽兄ぃ」

穂桷
「とりあえず、若い娘さんのいるところを重点的に見回りすればいいんじゃないか?」

凰珠
「ちょっと離れてるけど、雪苗ちゃんのところは?」

穂桷
「雪苗殿のところは、優秀なお武家様がいるが……見回らなければいけないな」

凰珠
「雪苗ちゃんのことになると必死になるもんね〜」

穂桷
「はぁ? お前、何か勘違いしてないか?」

凰珠

「いやいや、若いね、穂桷兄ぃも!」

五十里
「最初は花冠だった」(一同爆笑)

穂桷
「五十里も何か勘違いしてるな〜」

五十里
「あれからだろう。景房と穂桷が仲良くなって、それから二人が……」

穂桷
「お前、妬いてるのか!?」

凰珠
「何、五十里兄ぃってば、穂桷兄ぃに気があったの!?」

穂桷
「いや、違うと思うぞ(笑)。まあ、まずは村のことを考えなければ」

凰珠
「う、うん」

穂桷
「それに景房にも、雪苗殿のことはくれぐれもよろしくと言われているしな。雪苗殿にもしものことがあったら、景房に合わせる顔が……」

五十里
「なくなるわな」

凰珠
「会った瞬間にプチッだよ、プチッ(殺されると言いたいらしい)」

語り部
 やりかねないね。(一同 笑)

凰珠
「景房兄ぃ、怒ると怖いし」

穂桷
「まあ色々あるが、とりあえず頑張ろう」

語り部
 具体的にはどういう風に警護するんですか?かなり離れてますよ、屋敷まで。

一同
 う〜ん(悩)。

穂桷
「こういうのはどうだ。村の娘達を杜に集め、理源殿に守ってもらう。私達は屋敷の方を守る」

凰珠
「そうだね〜。心配だもんね〜(やたらと絡む凰珠)」

穂桷
「逆でもいいぞ」

凰珠
「いや、私は別に、何も言わないよ」

帛絽
「穂桷がそれほどまでに、理源の力を信用しているならいいけど」(一同 笑)

穂桷
「いや、まがりなりにも杜の祭主にまでなった男だぞ。それに、あの杜には理源殿の強い式神がいたじゃないか」

凰珠
「そうだね。OK、OK!」

 
 

 そして俺達は、穂桷と凰珠の強い意見に押され、そのまま闇照道の杜に村人全員を集めて、半ば強引に理源さんに彼らの身柄を預けた。帛絽はいまいち不安そうな様子だったが、俺から見れば、普段のとぼけた様子はポーズにしか思えない。案ずるべきは杜に集められた村人よりもむしろ、俺達自身だろう。
 俺達は武具を手に、丘の上にそびえる高宮の屋敷へと向かった。零氷と景房がいないことを裏付けるように、屋敷はひっそりと静まり返っている。
 穂桷が話を通してくるということなので、俺たちは門の前で待っていたが、数分と経たぬ内に、幾分沈んだ面持ちの穂桷が出てきた。その後ろでバタン、と木戸が閉ざされる。結果は明白だった。
「……雪苗殿は、お武家様がお守りするそうだ」
 穂桷の説法も、彼よりずっと年上の武士には通用しなかったものらしい。それもそうだ。いかに俺達が彼女の幼馴染みで、腕に自信があるとは言え、村人風情に警護を任せたとあっては武士の名折れだろう。
 屋敷の中では一層警護を厳しくしているらしく、俺達の入り込む余地はすでになかった。
「一旦、杜に戻ろう。私達は村人の警護につくんだ」
 穂桷の声が沈んでいたのは、果たして自分が認められなかったことへの落胆だったのだろうか。
 それだけではないように見えた。

 
 

語り部
 では、杜に戻った君達のところに理源がやって来ますね。
「雪苗の方は?」

穂桷
「雪苗殿は警護の方々がお守りするそうで」

語り部
「あんなモヤシみたいな武士で大丈夫かね〜」

穂桷
「しかし、一応お武家様ですから」

語り部
「よし、ここは俺が見ていよう。お前達は雪苗のところに行っといで」

穂桷
「よろしく頼んだぞ!」
 と、理源さんの式神に。(一同爆笑)

凰珠
「お願いね」

語り部
「そう、この式神の猫がいれば大丈夫。この猫は師匠からの貰いもんでな」

凰珠
 貰い物かい!

帛絽
 とにかく村人はこの猫に任せて、俺達は高宮の屋敷に急ぐぜ!

語り部
 それでは、君達は再び屋敷に到着します。既に陽はすっかり落ちて、屋敷をかがり火が煌々と照らし出していますね。門の前に槍を持った武士が二人ほど立って警戒しており、門の中にはさらに多くの警護の者が配されているようだ。

穂桷
「お武家のメンツもあるし、我々は……」

五十里
「外か?」

穂桷
「そうだな」

語り部
 どこを警護するの?

凰珠
 東西南北の塀の外に一人ずつ、それぞれ灯火具と呼び子笛を持って立ちます。

語り部
 それぞれどこに立つか教えてね。

凰珠
 雪苗ちゃんの部屋に近いのってどっち?

語り部
 北側です。

凰珠
「(穂桷に)頑張ってね」
 東側に立つ。

五十里
 ……南。

帛絽
 西かよ〜。

穂桷
「何が頑張ってなんだ?」
 残る北側に。

語り部
 しかし、どこから来るのか決めるのはダイスであった。1が東、2が南、3が西、4が北。(コロコロ)3、西ですね。

帛絽
 俺かよ〜。

語り部
 ここで全員、〔受動感知〕で判定して。

凰珠
 技能値20%に、『感覚』が17。(コロコロ)あっ……98で、ファンブル(泣)。あたし、やる気ないのかなあ(笑)。

五十里
 明暗分かれたな。01でクリティカル。

穂桷
 あ、俺も01。

帛絽
 何だ、みんな極端だなあ。俺は68で失敗。

語り部
 成功した穂桷と五十里は、西の方から何かが近づいてくる気配があるのに気づくね。

五十里
 西側に走る。

穂桷
 呼び子笛を吹きながら走る。

語り部
 帛絽は失敗したんだよね?

帛絽
 うん。
語り部
 では、突然二人が走ってきますね。

帛絽
「どうした?」

穂桷
「来るぞ!」
 妖怪かも知れないし、〔千里眼〕で判定してもいい?

語り部
 ダメ。〔千里眼〕はあくまで変身している妖怪の本性を見破ったり、姿を消した妖怪を探したり、幻を見破るために使うものなの。向かってくるのは明らかに猿の集団だから。

凰珠
 穂桷兄ぃが呼び子笛吹いてるし、もう気づいていい?

語り部
 いいよ。でも戦闘に参加できるのは3ターン目から。それから、辺りが暗いので暗闇ペナルティが発生。〔暗闇戦闘〕の判定をしてください。灯火具もあり、月も出ているので、失敗すればペナルティ−10%。判定に成功すればペナルティなしで行動できます。あ、帛絽の式神には関係ないので、本人だけ判定してね。

帛絽
 あちゃ〜、失敗! 式神だけが頼りだぜ!


 戦闘を行う際、常に周囲を見渡せる平坦な場所で戦えるとは限りません。時には不安定な船の上や水の中、真っ暗な闇の中で戦わねばならないこともあります。
 ここで語り部が示した『暗闇ペナルティ』とは、それら不利な環境における『環境ペナルティ』の一つで、夜の闇で見通しが利かないために普段の力を振るうことが出来ない、という状況を表すものです。ここでは月が明るく、また灯火具があるということで、ペナルティは−10%と一番軽いものになっています。
 このペナルティを軽減させるのが〔暗闇戦闘〕という技能であり、この判定に成功することで、ペナルティを半減させることが出来ます。ただし−10%のペナルティの場合は、その効果を全く打ち消すことが出来ます。
 また、式神はこれら『環境ペナルティ』の影響を受けることがないため、判定の必要がありません。帛絽としては一安心といったところでしょうか。


穂桷
 技能がないので、『+能力値』の『意志』のみで判定。(コロコロ)出目は02。

語り部
 穂桷の【成功確率】が20%だから、ちょうど10分の1。クリティカルだね。
【成功確率】の10分の1以下か01が出ればクリティカルになるんだ。〔暗闇戦闘〕の場合、ペナルティ半減ではなく、無効にすることが出来る。もっとも、−10%のペナルティは普通の成功でも無効に出来るけど(笑)。

穂桷
 カードが2枚交換できるから、いいさ。う〜ん、それにしてもダイス目が良すぎる。何かあるな、多分。

五十里
 俺は忍術の〔風読みの術〕で判定。当然成功だ。

語り部
 では、戦闘を始めましょうか。敵は猿の集団。五十里君がコテンパンにやられたようなやつですね(笑)。

五十里
 う、うるさ〜い!

 



 あの時は不覚を取ったが、今は俺一人ではない。穂桷と帛絽がいれば、こんな奴らに遅れをとることはないだろう。凰珠がいまだ到着していないのが気がかりだが、何とかなるはずだ。
 心理的な余裕もあってか、妖怪に操られているとは言え、猿の集団ごとき俺達の敵ではなかった。二匹、三匹となぎ倒し、凰珠が駆けつけた頃には、猿の亡骸が山をなしていたのである。

 


凰珠

 ああ! あたしの出番が(笑)!

穂桷
 来るのが遅いんだよ。そのまま辺りを警戒します。

語り部
 他に気配はないようですね。門が開き、警護の者達がやってくる。
「大丈夫ですか!?」

穂桷
「まあ、何とか……」

語り部
「とりあえず中に」
 そう言って、君達を中に入れてくれますね。

帛絽
 五十里に傷の手当てをしてあげよう(傷を負っていたのは五十里だけだった)。〔医学〕が20%に、『記憶』12。『医学書』と『治療具』によるボーナスが合計+30%。合計62%もある。(コロコロ)えーと、92は失敗だな。

語り部
 (参ったな〜)じゃあ警護の人が、
「これをお使いください。都で買ったものです」
 と言いながら符を3枚差し出します。〔回命符〕のようですね。 (自分でやっといてなんだけど、回命符などの闇照道の符はそうそう売っているものではないので、無闇に与えない方がいいでしょう。言い訳のようだけど、これは仕方がなかったんだよ。だって、五十里が……泣)

五十里
「一枚使わせてもらおう」
 使います。

語り部
 では2d6点の生命が回復します。

五十里
 (コロコロ)8点回復か。

語り部
「あとはいいですね?」
 そのまま、警護の人は符をしまってしまいますね。で、ちょうどその時。みんな〔受動感知〕をしてくれたまえ。

凰珠
 成功したよ。

語り部
 成功したのは凰珠だけ?

凰珠
 うん。

語り部
 では、君達は縁側で休んでいるんだけど、凰珠はそのすぐ側にある池の前に気配を感じる。

凰珠
「そこ、何かいない?」

五十里
「え?」

語り部
 そこにはいつの間にか、見知らぬ老人が一人立っている。

穂桷
 怪しい。〔千里眼〕だ!

帛絽
 俺も〔千里眼〕で見てみる。

語り部
 どうぞ。難易度は−10%。

穂桷
 この時点で妖怪だって言われてるようなもんだよな(笑)。ええと、技能値が20%、『意志』が20。難易度が−10%で、合計30%だ。(コロコロ)よし、26で成功!

帛絽
 ことごとくダメだな。失敗。

語り部
 では、穂桷にはその本性が見える。頭部に鉤状の二本の角を持ち、全身の皮膚には老人のような深い皺が刻み込まれた化け物で、その目は満たされぬ欲望を映してかギラギラと金色に光っているね。
 穂桷は〔妖怪知識〕で判定してみて。姿を見てるから難易度はないよ。

穂桷
 あ〜、大事なところで失敗した! 何ものなんだろう?
「何しに来た、化け物」

語り部
「ホッホッホ。ついに見つけた。あれを食らえば私は不老不死になれる。千年に一度の……」
 そう言って、その化け物はいやらしい笑いを浮かべるね。

穂桷
「そうか……」
 三鈷杵を構える。

語り部
「どけ、小僧。お主らで我を止められると思うてか。今なら見逃してやっても良いぞ?」

穂桷
「残念ながらそうはいかん。親友に殺されたくはないからな」

語り部
「愚かな。この世でもっとも大切なのは自分の命だというに」
 そう言うと、突然その老人の皮がはじけて本性が現れる。

帛絽
「な、何か見たことある」
 〔妖怪知識〕していい?

語り部
 いいよ。帛絽は『妖怪絵巻』を持ってるんだよね?では、名前が分かる。その妖怪は『汚古能』と呼ばれるものだ。

帛絽
 【成功確率】は42%。……43。失敗した〜!

語り部
 では詳しいデータは一切分からない(笑)。汚古能は君達に向かって襲い掛かってくるよ。ようやく、全員揃って戦闘が出来るね。

凰珠
 今度は凰珠がいるんだから、楽勝だもんね。

語り部
 では、戦闘に突入だ!

 



語り部
 ところで、みんな戦闘の基本的なやり方は覚えてるよね?

帛絽
 ……。(自信なさそうにキャラクターシートを見る)

語り部
 仕方ないなあ。ではここで、戦闘中の行動の仕方をさらっと説明しよう。


 戦闘は、語り部によるターンとフェイズのカウントによって進行します。1ターン(10秒)は10フェイズ(1秒)に区切られており、主人公達は1ターンに1回、いずれかのフェイズに行動することが出来ます。
 その行動に大きく関わってくるのが『カード』であり、これは通常の52枚のトランプにジョーカー1枚を足したものです。他人によく切ってもらったカードを山札とし、プレイヤーはその内上から5枚を手札として持っています。
カードの数字は行動できるフェイズを示しており、例えば『A』を出せばそのターンの1フェイズ目に、『8』を出せば8フェイズ目に行動することが出来るのです。なお、『J〜K』は『10』として扱います。
 また、それぞれのスートにも意味があり、『スペード』であれば『切』という攻撃効果を選択したときの【命中成功率】に、『クラブ』であれば『突』に、『ハート』なら『叩』に、そして『ダイヤ』なら【術の発動率】にそれぞれ+10%のボーナスが得られるのです。


語り部
 大体分かったかな? 慣れてくればもっと高度な戦略も出てくるんだけど、とりあえず今必要なのはこのくらいだよ。

帛絽
 分かった……ような気がするぞ。

凰珠
 へへ〜、凰珠はバッチリだよ! あ、そうだ。凰珠は『凰珠流飛燕剣』の使い手なんだけど、この『飛燕剣』て何?

語り部
 どこがバッチリなんだよ。君、知らないで門派を選んだの?

凰珠
 だって、名前が格好よかったんだもん。

語り部
 ……君の『飛燕剣』は、通常とは少し異なったカードの使い方をするんだ。君には、1ターンに1回という行動の制限がない。

帛絽
 え〜、それ、メチャクチャ強いじゃん。

語り部
 続きを聞きなさい。でも、普通はカードを1枚使ったらすぐに山札からカードを引ける。つまり手札は常に5枚になるんだけど、『飛燕剣』の場合、カードを使ってもすぐには引くことが出来ない。1ターンに何枚使おうが、カードを引けるのは、そのターンが終わって次のターンが始まる前に1枚のみ。

凰珠
 つまり、あんまりたくさん使うと手札がどんどん少なくなるってこと?

語り部
 そう。このシステムは、行動したいフェイズと同じ数字のカードを持っていないと行動できない。つまり、長引けば長引くほど、体力が続かなくて不利になっていくわけだ(笑)。

凰珠
 う〜ん、意外な落とし穴。つまり『飛燕剣』の使い手は、相手を秒殺しろってことね。

語り部
 まあ、そうだね。いずれにせよ、このシステムは基本的に秒殺のシステムなんだけど。
 では、実際の戦闘を始めよう!


◆第1ターン
手札
凰珠   2H 3H 3D JC JH
帛絽   AD 3C 8D 9S KC
穂桷   AC 3H 3D 5D 9C
五十里  AH AC 3C 8C 10D
※ここでは全員の手札を公開していますが、実際のプレイでは手札や引いたカードの宣言を行う必要はありません。むしろカードを隠していた方が、緊迫感のある戦闘を楽しむことが出来ます。
H=ハート/S=スペード/C=クラブ/D=ダイア


語り部
 それじゃあ、カウントを始めるよ。
 第1ターン。1、2、3……。

凰珠
 はい! 3Hを出して行動!

穂桷
 何だ、凰珠もか。私も3Dで行動だ。山札から引いたカードは4S。

語り部
 二人が同時に行動するわけだね。では、『基準値』を教えて。

凰珠
 『基準値』???

穂桷
 プレイの前にちゃんとルールを読みなさい。同じフェイズに行動する場合、どちらがより早く行動するかを決めるのが『基準値』。凰珠の場合は身分が『武家』だから、『回避』の値が『基準値』になるの。

語り部
 ……セリフをとられちゃった(笑)。で、『基準値』の高い順に行動することになります。二人の『基準値』は?

凰珠
 凰珠は23だよ。

穂桷
 さすがに亜獣は早いな。私は僧侶なので『法術の基本発動率』が『基準値』になるから、20だ。

語り部
 では凰珠からだね。どうする?

凰珠
 ん〜。攻撃しようかな? でも、穂桷兄ぃが3Dで行動するってことは、法術を使うんだよね?凰珠、先に行動しない方がいいんじゃないかなあ。

語り部
 それじゃあ、行動を遅らせる?

凰珠
 へ? そんなこと出来るの?

語り部
 『基準値』の高い人は、わざと行動を遅らせることで、それ以降の好きなタイミングに行動することが出来るんだ。早い人の特権というわけだね。

凰珠
 それじゃあ、凰珠は行動を遅らせる。がんばれ、穂桷兄ぃ!

穂桷
 ならば、私は法術の〔不動縛呪〕を使うぞ。ふふふ、動けなくなってしまえ〜!
 私の法術の【基本発動率】が20%、〔不動縛呪〕の技能値が20%、『念珠』によるボーナスで+5%、さらにカードのスートによるボーナスが+10%。合計55%もあるぞ。(コロコロ)ダイス目は18。成功だ。

語り部
 〔不動縛呪〕は相手を動けなくする上に、解除するまで1フェイズ1点のダメージを与える法術だ。でも、かけられた側も抵抗を試みることが出来るから、その【抵抗難易度】を出してくれ。

穂桷
 私の【法術シフト】は、記憶(許容を越えない値)の19をダメージシフトの表に照らし合わせると、2d6。(コロコロ)出目は6。低かったな〜。

語り部
 それでも、このランクの妖怪は簡単にかかってしまうのであった(笑)。でも、6なら1回抵抗を行えば解けるから、このターンのこちらの行動までだね。

穂桷
 へえ。何フェイズ目なの?

語り部
 えーとね……って、教えるか! たとえ〔妖怪知識〕に成功してても、実際に戦うまで行動フェイズは分からないの!

穂桷
 チッ、引っかからなかったか……。

語り部
 まったく、なんて奴だ。
 こちらは〔不動縛呪〕の効果を受けて『不動状態』になった。さらに解除するまで毎フェイズ1点のダメージを受ける。これは痛い。まず1点受けた。

凰珠
 ところで、『不動状態』ってどうなるの?

穂桷
 『不動状態』になると『回避』『基準値』が0%になり、さらに『抵抗』以外の行動を一切行えなくなるんだ。

凰珠
 らっきぃ! それじゃ、今のうちにタコ殴りにしちゃえばいいんだね!

語り部
 まあ、汚古能は最初から『回避』が0%なんだけどね(笑)。

凰珠
 意味ないじゃ〜ん! まあいいか。
 凰珠は打刀で攻撃しま〜す。ええと、凰珠の打刀の【武器命中率】は57%。……どうしようかな。打刀は『切』が一番追加ダメージが多いんだけど、出したカードはHなんだよね。
 よし、自分のダイス目は信用しない!(一同失笑)
 スートをつけて『叩』で攻撃。(コロコロ)ダイス目は41。ああ〜、切っておけば良かった〜!

語り部
 らっきー。こっちは『叩』に強いんだよね。

凰珠
 ダメージは『叩』7点だよ。

語り部
 ちょこっと食らってしまいましたが、まだまだ。では、カウントを続けますね。
 4、5、6、7、8……。

五十里&帛絽
 はい!

語り部
 また同時か。しかも8フェイズ目はこちらも行動なのだ。

帛絽
 ふふん、それだけじゃなく、俺様の式神も行動なのだ!

語り部
 4人も入り乱れるの? では、『基準値』の申告をしてください。こっちは18……あっ!『不動状態』だから0です(泣)。

五十里
 俺は19だ。カードは8Cで、引いたカードは6C。

帛絽
 俺様は12で、式神のココが16。出したカードは8Dで、引いたカードはAH。

五十里
 式神の方が早いのか(笑)。19の俺が最初に行動だな。相手が身動きできない今のうちに攻撃しておこう。俺の忍刀による【武器命中率】は30%。『突』の攻撃効果を選ぶので、スートによるボーナスが+10%。40%あれば大丈夫だろう。(コロコロ)……89で、失敗。

帛絽
 まったく、頼りねえなあ。次は俺の式神の行動。攻撃するぜ!式神の【命中成功率】は60%だ。(コロコロ)出目が04ということは、クリティカルだな。

語り部
 な、何ですと?

帛絽
 ダメージは2d8で10点。

語り部
 それは痛い! 次は帛絽本人の行動だよ。

帛絽
 俺様は〔攻滅符〕の、やはりここは燃える〔火行符〕だぜ。スートボーナスもついて52%だ。(コロコロ)69で失敗。

語り部
 優秀なのは式神だけか。では、やっとこちらの行動。〔不動縛呪〕に『+抵抗』じゃ!妖怪は条件さえ満たせば判定が必要ないので、これでやっと行動できるようになった。でもここまでに受けたダメージは6点。かなり痛かったな。

穂桷
 チッ、もう解けてしまったか。

語り部
 さあ、ここからが本領発揮だぞ!
 9、10。

凰珠
 は〜い! JCを出して行動する。当然打刀で攻撃。今度は『突』にしてみようかな。出目は93で、失敗。
 え〜ん、せっかく行動したのに〜!

語り部
 残念でした。それでは、次のターンに進みましょう。

凰珠
 カードを1枚引くね。引いたカードは8H。


◆第2ターン
手札
凰珠  2H 3D 8H JH
帛絽  AH AD 3C 9S KC
穂桷  AC 3H 4S 5D 9C
五十里 AH AC 3C 6C 10D


語り部
 それでは、第2ターン。1……。

帛絽
 おう! ADで行動だ! 引いたカードは5D。
 今度こそ、〔攻滅符〕の〔火行符〕で攻撃だ。(コロコロ)今度は40で成功。ダメージは1d10で5点。

語り部
 なるほど、〔火行符〕か。では、炎に包まれながら汚古能に向かって飛んだその符は、汚古能の体の表面ではじかれてしまうね。
「ホッホッホ。効かぬ。効かぬのお」

帛絽
 何!? ひょっとして、『火』属性の攻撃は効かないのか!?

語り部
 どうやらそのようだねえ。〔妖怪知識〕に失敗した君達には分からなかったけど。

帛絽
 うーん、〔妖怪知識〕って失敗しちゃいけない技能だったんだな。くそー、俺の符が……。

語り部
 残念でした。ではカウントを進めるよ。2。

凰珠
 はい。凰珠が2Hで行動するよ。今度は自分のダイス目を信じて、切る。(コロコロ)25で命中して、ダメージは『切』15点。やったね、ほぼ最大ダメージ!

語り部
 うわ、痛い! でも、まだまだいけるぞ。次は3フェイズ……。

凰珠&穂桷
 は〜い。

語り部
 はい!?  また行動するの?

凰珠
 だって、せっかくの飛燕剣だし。

穂桷
 だって、せっかくだから攻撃したいし。

語り部
 はいはい。では『基準値』の高い凰珠からどうぞ。

凰珠
 やっぱりここは穂桷兄ぃとの連携を重要視(笑)。大好きな穂桷兄ぃに花を持たせるために、遅らせる(笑)。

穂桷
 ではそんな凰珠の期待に応えて、ここでとどめを刺してやるぞ。3Hで行動しているので、三鈷杵で『叩』攻撃だ。(コロコロ)ありゃ、76で失敗。引いたカードは8H。

凰珠
 もう〜。せっかく穂桷兄ぃを立ててあげようとしたのに、凰珠の気遣いが無駄じゃない。
 凰珠は3Dで行動、14で命中。ダメージは『切』14点だよ。

語り部
 ……ではその一撃で、汚古能はすさまじい叫びを挙げながら倒れます。そして、そのままシュウシュウと音を立てて溶けていきますね。

一同
 やった〜!

凰珠
 宣言どおり秒殺!

語り部
 うう、たかだか13秒で決着をつけられてしまった……。

 


語り部
 汚古能というその妖怪は、すっかり溶け去ってしまいます。

五十里
 でも、汚古能の言っていたことが気になるな。
「あまり考えたくはないが、食らうといっていたのはもしや……」

穂桷
「まあ、おそらくは雪苗殿のことだろう」

五十里
「千年に一度と、気になることを言っていたな。後で理源さんにでも聞いてみるよ」

穂桷
「ああ、頼む」

凰珠
 これでもう終わりかなあ? 一応辺りを確認する。

語り部
 もう、何の気配も感じられないね。あの猿を操っていたのも、おそらくはこの汚古能だったんじゃないかな。
 そのまま休息を取りつつ、無事に夜が明けますね。

帛絽
「どうにかなったようだな」

凰珠
「あれでおしまいならいいんだけどね」

穂桷
「まあ、そうはいかないだろう」

五十里
「屋敷の者からも零氷や景房に連絡が行くと思うが、穂桷の方からも手紙を出しておいた方がいいんじゃないか?」

穂桷
「何をだ?」

五十里
「ことの顛末を……。身内が危険にさらされたということであれば、教えておくべきだと思うが」

穂桷
「その必要はないだろう。余計な心配をかけるだけだ」

五十里
「知らない安心と知っている不安、どちらがいいかは本人次第だがな。まあいいさ(←穂桷が嫌いなのか、五十里?)」

穂桷
「二人が雪苗殿を迎えに来た時には、改めて私の方から話そう」
 後は何事もなさそうなので、寺に帰って休みます。
「帛絽、理源殿にはよろしく伝えておいてくれ」

凰珠
「おやすみ〜」

語り部
 では、帛絽と五十里が杜に帰る途中、猿の死体が点々と転がっていますね。

帛絽
「どういうことだ?」

五十里
 何による傷ですか?

語り部
 刀傷だったり、焼かれていたりするね。

帛絽
「どこかの偉い人が助けてくれたんだな」

五十里
「そうだな……。どこかの、偉い人がな」

語り部
 そして君達が杜に入ると、社と呼ばれる建物の周りにはおびただしい数の猿の死体がありますね。

帛絽
「うお! 何でこんなに!?」

語り部
 ざっと四、五十匹もいるでしょうかね。

帛絽
 とりあえず中に入ってみる。
「大丈夫か!」

語り部
 では、村人達はのほほんと円座を組んで座っていますね。
「はあ、何かあったんですか?」

帛絽
「外に猿どもの死体が……」

語り部
 帛絽、ここで〔闇照道知識〕で判定してごらん。気づくかな?

帛絽
 成功してくれよ。……あちゃ、また失敗。

語り部
 では特に気づくことはないね。その内、妖気に当てられた猿の死骸は、日光を浴びてカラカラに干乾び、サラサラと崩れていく。
 そこに、手に刀を持った理源がやって来ますね。
「おう、お帰り!」

帛絽
「こちらは大丈夫だったようですね。ところでどうしたんですか、その刀?」

語り部
「ちょっと手入れをな……」

帛絽
「そうですか」
 猫を探す。キョロキョロ。

語り部
 足元にいるよ。

帛絽
「偉いな〜。こんな小さな体で、あんなにいっぱい。お前は炎も吐けるのか。そうかそうか」(一同 笑)

語り部
「そういうお前らの方はどうだったんだ?」

帛絽
「汚古能が出まして。そいつを倒しました」

語り部
「少しは出来るようになったんだな。多分、そいつがこの一団のボスだったんだろう。まあ、しばらくは安心だ。知り合いの闇照道に頼んで結界でも張ってもらうよ」

帛絽
「それがいいですね」

語り部
「ご苦労だったな。今日はゆっくり休め。村人も帰すぞ」

帛絽
「そうですね」

五十里
「ところで理源さん、闇照道の知識がないのでお聞きしたいのですが、今年は千年に一度の年回りとか、何かそういうことがあるのでしょうか」

語り部
「特にないと思ったが……」

五十里
「高宮家に現れた汚古能という妖怪が、そのようなことを言っていたもので」

語り部
「後で調べてみるよ。俺は疲れたんで酒を飲んで寝る。お前らも休め」
 村人達もそのまま帰っていきますね。

帛絽
「俺達も寝るか」
 あ〜あ、使った符を作り直さねえとな。寝れねえよ〜。

五十里
「そうだな、休もう」
 火薬を補充したら、俺はさっさと休む(笑)。




 全く、奇妙と言うしかない事件であった。
 妖怪などというものが現実に存在した。その事実もさることながら、俺達にとっては近しい存在である雪苗が、その妖怪に狙われたのだ。『千年に一度』という言葉にその理由の一端を窺うことは出来たが、それも推測の域を出ないものだった。
 この騒ぎは、雪苗の耳にも届いたろうか。
 知らぬ間に事件の当事者となっていた彼女は、この事実を前に怯えてはいまいか。
 だが例えそうであっても、それを癒すのは俺の役目ではない。どうせまた、穂桷が必死になって彼女の心を支えようとするのだ。
 雪苗には、穂桷がいる。
 影に生きることしか知らぬ、まして普通の人間でもない俺の出る幕ではないのだ。
 そんなことを考えている俺自身が何となく腹立たしく、俺は板張りの床を蹴った。
 俺は忍びだ。余計な感情など足枷にしかならない。
 俺は主の大切な血族を守った。その事実があればいいではないか。
 それでもまだ何かを訴えようとする心を無理矢理押さえつけ、俺は目を閉じた。
 終わったのだ。この事件は、終わった。
 ――しかし。
 俺はまだ知らなかったのだ。
 この事件が、俺達を運命という大きなうねりの中へ巻き込んでいく、ほんの始まりに過ぎなかったことを
 

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