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| TRPG system EIN 〜火音帝国編〜 火音帝国リプレイ 第壱編 すべての夢はうたかたの |
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第一章 聖業869年 仲秋 |
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| 妖なる夢の夜 |
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教えてくれ。 与えてくれ。 導いてくれ。 俺に生き方を教えてくれ。 俺に使命を与えてくれ。 俺をその先に導いてくれ。 自分では何も見つけられない。 だから、与えてくれ。 愛するものも、守るべきものも。 お前が、俺に与えてくれ |
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語り部 さて、君達は今、高宮家に駆り出されて引っ越しの手伝いをしています。荷物を運ぶ君達の横では、景房もせっせと働いていますね。一方零氷はといえば、帛絽に絡んでいる。 「お前にはこんな田舎がお似合いさ」 そんな憎まれ口を叩きつつも、零氷は少し淋しそうですね。 帛絽 「城の方じゃ、野性的だから目立つんじゃないのか? それに、城は窮屈だって聞いたぜ」 語り部 「まあな。だが、その内迎えに来てやるよ。お前ら全員な」 帛絽 「どうだかな……」 穂桷 「では、なるべく早くしてもらいたい。私達も、いつまでもここにはいないだろうから」 帛絽 「そうだ。俺たちはいつまでもこんな村でくすぶっているような器じゃないんだからな。お前らが来なければ、こんな村とっくに出てたんだぞ」 語り部 「人のせいにするな。人は何かをしようとする時、必ず行うものだ。お前の場合、決心が足りなかったんだ。そういうことだろ」 帛絽 「……ふん」 いそいそと荷物を持って去っていく。 語り部 では、そこで景房が穂桷を呼びますね。 「我々二人はこれから登城することになります。しばらくは帰って来ることが出来ないでしょう。そこで、あなたに雪苗様の警護をお願いしたいのです」 穂桷 「分かった」 語り部 景房は軽く頭を下げますね。 穂桷 「お前こそ気をつけろ。城では色々あるだろうからな」 語り部 「私は大丈夫。ただ、零氷が心配です。あのような性格ですからね。――しかし、零氷は私が必ず守ります。たとえ私の命が……」 穂桷 大袈裟に溜め息をつく。 「一つ、お前に言って聞かせねばならないようだな」 語り部 「何ですか?」 穂桷 「いいか、景房。お前の命を投げ打ってでも、零氷を守りたいという気持ちは分かる。しかし、一番初めに考えねばならないのは、二人が生き残ることだ」 語り部 「分かっていますよ。この八年間、あなたには嫌というほど言われ続けてきましたからね」 そう言って、景房は少し笑います。 「それに、あの言葉の通り、零氷は必ずここに戻ってきます」 穂桷 「ではそれまで、私が雪苗殿をお守りしよう」 語り部 「お願いします」 そのまま、景房は荷物を運びに行きますね。 一方、他のみんなは彼らのそんな様子に気づくこともなく、引越しの手伝いをしています。 凰珠 荷物を運びながら零氷に話し掛ける。 「ねえ、零氷」 語り部 「何だ凰珠」 凰珠 「どのくらいで帰ってくるの?」 語り部 「そうだな〜、やっぱりある程度の武勲を立てなきゃいけないからな。どのくらいになるかは分からん」 凰珠 「(涙ぐんで)淋しくなるね」 語り部 「大丈夫だ! お前は俺の妾になるんだからな」 凰珠 「まだそんなこと言ってんの〜?」 とか言いつつ、顔を赤らめてる(笑)。 五十里 その光景に何となくムッとして、影から零氷を睨みつける(笑)。 語り部 もちろん、零氷はそんな視線に気づきもしないんだけど(一同苦笑)。なおも凰珠に言いますね。 「冷たいなあ。あの日の約束を忘れたのか?」 凰珠 「覚えてないよ〜。それにどうせ妾になるなら、零氷なんかより景房兄ぃの方がいいもん。大人だし、落ち着いてるしさ」 語り部 「(残念そうに)……お前なら景房を任せてもいい」 凰珠 「やった! お墨付きもらっちゃった」 穂桷 「ならば凰珠」 凰珠 「ん?」 穂桷 「お前も少し、礼儀作法というものを学ばなければいけないな」 凰珠 「うっ……。は〜い」 五十里 「そういうのを墓穴って言うんだ」 凰珠 「うるさいな〜」 語り部 そんな会話を聞いて、零氷は笑い声を挙げますね。 「俺はすぐに戻ってくるつもりだ。それまで皆、頼むぞ。それに帛絽、お前も少しは闇照道の術を磨いておけよ。結局、魔人と名高い理源には会えず終いだったしな」 帛絽の師である理源さんは、何かと理由をつけて零氷と会おうとはしませんでしたね。大抵は仮病とか二日酔いとか、そういう理由でしたけど。 帛絽 「まあ、その内会えるだろ」 語り部 「そうだな。……それじゃ、みんな達者でな」 というわけで、皇零氷と須藤景房はお城へと登城していきました。 穂桷 そう言えば、私と凰珠の保護者である沢庵和尚はお寺にいるんでしょうか? 語り部 最近は姿を見ていませんね。 穂桷 あのクソ坊主! 五十里 二人を見送ったあとにポツリと呟く。 「八年前はこんなに静かだったんだな」 凰珠 「もっとうるさかったと思うよ。みんなガキだったから」 五十里 「確かに、帛絽が帛絽だったからな」 帛絽 「何が?」 五十里 「口より先に、拳で語ってた」 帛絽 「うるせえな〜」 穂桷 「その辺にしておけ。一番淋しいのは帛絽だったりするからな」 凰珠 「そうだね。喧嘩相手、いなくなっちゃったもんね〜」 五十里 「いや、最近帛絽も落ち着いてきたからな」 穂桷 「(意外そうに)落ち着いてきたのか?」 凰珠 「ちょっと」(ひどい言われようだ……) 帛絽 「あ〜あ、景房がいなくなって淋しいな〜」
胸に小さな穴があいたような、奇妙な感覚。 これが『淋しい』ということなのだろうか。 父には教えられなかった感情だが、父を失ったときの喪失感にも似ていた。 二人の後姿を見送って素直に涙ぐんでいた凰珠も、そして杜に帰ってから何となく無口になっている帛絽も、自分の感情に正直だ。だがそうあれるのは、その感情を彼らが『知っている』からなのだ。 二人が羨ましかった。 これから先、ともすれば何年もの間、彼らがそんな風に淋しさを面に表す度、自分は同じことを思うのだろうか。 ――だが、そんな俺のささやかな悩みを知る由もなく、事件は訪れたのだ。
語り部
語り部 君達が村人から聞き出した場所までやって来ると、そこにはところどころ食いちぎられた牛の死骸が転がっている。 凰珠 「……ただの猿、なのかな」 穂桷 歯形を調べてみる。 語り部 それじゃあ、【行為判定】を行ってみよう。〔能動感知〕で判定してみて。 穂桷 〔能動感知〕の技能は修得していないから、『+能力値』の『意志』のみで判定か。 語り部 そうだね。穂桷の『意志』は20。d%で20以下が出れば成功だよ。d%は、10面体ダイスを2つ振って、一方を十の位、もう一方を一の位とするんだ。 穂桷 よ〜し……(コロコロ、ダイスを振る音)。ええと、ダイス目は54。失敗か〜。 ここで穂桷が行った判定を【行為判定】と言います。穂桷が『歯形を調べる』と言ったので、語り部は〔能動感知(様々なものを探したり、気配を探ったりするための技能)〕を指定したわけです。 【行為判定】は、語り部が指定した技能ごとに決められている『+能力値』を技能値に足し、d%でその数値以下を出せば成功となります(d%とは、1〜100までの乱数を求めることで、この際に十の位が0、一の位が1の場合は1、両方が0の場合は100となります)。 ただし穂桷が行ったように、技能を修得していなくとも【行為判定】を試みることは出来ます。しかし技能を修得している者に比べて、その成功確率は大変低くなってしまいます。 案の定、穂桷は何の手がかりも見つけることが出来ませんでした。 語り部 よく分からないね。 凰珠 私も、周りに残ってる足跡とか調べていいかな? 語り部 いいよ。調べる人は〔能動感知〕で判定してください。 凰珠 あれ〜、せっかく技能を持ってるのに、ダイス目が最悪。87で失敗しちゃった。 帛絽 「こそこそしないで、出てきやがれ!(失敗したらしい)」 語り部 特に気になるものは見つけられないね。辺りは静かなものだし。 穂桷 「無闇に探し回っても見つからないだろう。これは餌が必要かも知れないな」 五十里 「(もったいぶって)足跡を調べればいいんだな?やってみよう」 〔能動感知〕でいいんだよね? 当然、俺は忍術の〔風読みの術〕で判定。成功確率は【基本成功率】が19%、技能値が20%、さらに『忍道具』を持っているので+10%。合計49%もあるもんね。 (コロコロ)……ダイス目は39。成功だ!これで〔風読みの術〕の技能にチェックがついて、カードも1枚交換できるぞ。 ここで五十里が行った『チェック』とは、プレイが終了した時点で行うキャラクターの成長に関わる大切な作業で、この『チェック』がついていないと、技能値を成長させることが出来ないのです。さらに、『チェック』がついていなければ、それに関わる能力値も成長させにくくなってしまいます。 また『カード』とは、戦闘においてキャラクターの行動を左右するもので、本システムでは一人一組ずつトランプを用意し、それを戦闘に用います。自分に有利なカードを手元に揃えておくことによって戦闘を優位に進めることが出来るため、カードの交換は大変重要なことなのです。 語り部 その足跡はこの辺りだけで、どこかへ続いているということもないですね。 凰珠 「やっぱり、餌を用意した方がいいのかな?」 穂桷 「食料が目当てならそうだろう」 凰珠 「死んだのは食べないんだよね……」 死骸を指差す。 五十里 ついさっきまで食べていた様子はありますか? 語り部 そうだね。死骸は結構温かい。鈍器などで殴られたような跡もあるよ。 凰珠 「……殴られてるの?」 帛絽 「何か、よく分からなくなってきたな」 語り部 そうですねえ。この状況を見て予想できるかどうか、〔妖怪知識〕で判定してもらおうかな。直接見たわけでもないし、難易度−10%のペナルティをあげよう。 火音帝国には、時折『妖怪』と呼ばれる化け物が姿を現すことがあります。それらの妖怪についてどれだけ詳しいかを示すのが、この〔妖怪知識〕という技能です。 また難易度とは、判定の際に語り部が与えるボーナスやペナルティのことで、簡単ならばボーナスが、難しければペナルティが与えられることになります。 ここでは、状況以外に判断材料がないため、−10%のペナルティを設定しました。 穂桷 ペナルティなんかいらないって。〔妖怪知識〕20%に『記憶』が19。難易度が−10%だから、成功確率は29%しかないよ。……お、26で成功。 帛絽 俺様は『妖怪絵巻』を持ってるから、判定に+10%。つまりペナルティと相殺だな。成功確率は32%で、ダイス目は78。失敗だ〜。 語り部 では穂桷は、妖怪の中には猿の群れを従え、それを使役するものがいると聞いたことがある。そうして妖怪に操られるものには、異様に知恵が働くようになるものも現れると言われ、集団で人を襲ったり、自分を操る妖怪のために人をさらったりするともされていますね。また、妖気に当てられるためか、その目は赤く光るとも言われている。 穂桷 「ということがあったな」 帛絽 「習ったような気がするな」(一同 笑) 穂桷 「これは少し気をつけた方がいいかも知れない。辺りを調べてみよう」 一同 「お〜う!」
敵を捕捉したまでは良かったが、少しばかり読みが甘かった。まさか、ここで猿の群れが俺に向かってくるとは思わなかったのだ。村の娘を抱えた猿の姿はもはや見えなくなっている。一刻も早く追わねばならない。
語り部 というわけで、五十里の後を追っていた三人。君達は、木の枝にだらしなくぶら下がっている五十里の姿を発見しますね(笑)。 凰珠 「五十里兄ぃ〜!」 帛絽 「下ろせ、下ろせ」 〔式神符〕を使って、式神を呼び出すぞ。え〜と、〔式神符〕の技能値が30%、術式の【基本発動率】が12%。合計42%だな。 語り部 ちょっと待った。〔式神符〕は何枚使うの? 帛絽 今は4枚しか作ってないから、4枚全部だな。何で? 語り部 〔式神符〕はね、符の枚数が多いほど強力な式神を作ることが出来るけど、その分【発動判定】にペナルティが発生するんだ。4枚なら−30%。つまり、12%でしか成功しないということだよ。 帛絽 そんなんじゃ成功しねえよ〜。あ、成功するまで判定すればいいのか。 語り部 それじゃあ、判定を行う意味がないだろ?だからこういう場合には『チェックなし成功』と言って、特殊な判定方法を用いるんだ。 『チェックなし成功』とは、戦闘時以外など、時間の制限がそれほど厳しくない状況において、何度も同じ判定を行いつづけることを抑制するための判定方法です。 例えば帛絽の〔式神符〕の場合、【成功確率】は12%となり、d%で12以下が出れば成功です。通常ならこれ以外で効果を現すことはありませんが、『チェックなし成功』の判定方法を用いる場合は、通常の失敗であれば効果を現し、技能のチェックやカード交換を行うことが出来ない、という処理を行うのです。 なお、『チェックなし成功』の処理を行えるのは【成功確率】が10%以上ある場合のみで、帛絽の〔式神符〕で言えば、これ以上多くの符を使った式神は作れないことになります。 帛絽 何だ、要はファンブルさえしなければ式神が作れるんだな。(コロコロ)お、11で成功したぞ。 語り部 では、チェックとカード交換を行って構わないよ。ちなみに式神の容姿は? 帛絽 狐。名前は古狐と書いてココ。 凰珠 可愛い〜♪ 語り部 漢字そのままじゃないかよ〜。じゃあ、ココは木の上まで飛んでいくと五十里を下ろしてきます。気絶しているようですね。 帛絽 「何やってるんだよ〜」 穂桷 急いで〔応急手当〕をする。技能値が20%、能力値は『感覚』だから18、『応急具』があるのでさらに+10%。合計48%か……。よし、23で成功。 語り部 では30分ほどして五十里は目を覚まします。ちなみに生命は1点に回復しました。 五十里 「うう……。ほとんどは倒したのだが……」 凰珠 「何やってんの〜?」 五十里 「しかし、おおよその方向は分かっている。一直線に追っていけば辿り着くだろう。どうやらさらってきたのは村の娘のようだ」 穂桷 「急ごう!」 そちらの方へ走り出す。 語り部 じゃあ〔遭遇〕を難易度−20%で判定して。 凰珠 う〜、失敗。 帛絽 そんなの、成功するわけないだろ。『武運』が16しかないのに。 語り部 【成功確率】は0%を下回ることはないよ。それに、01が出れば必ずクリティカルで成功だし。 帛絽 そんな確率の低いことがそうそう起こるもんか。ほら、失敗。 五十里 ……(失敗したらしい)。 穂桷 ん〜、気合はダイス目に宿る。(コロコロ)よっし、01!クリティカルだ! ここで言う『クリティカル』とは『華麗な成功』を意味し、反対に『ファンブル』とは『手痛い失敗』を表します。クリティカルならば大変良い結果が、そしてファンブルならば致命的な結果が導かれることになりますが、これらはチェックやカード交換にも関わります。クリティカルで成功した場合は、通常の成功と同様にチェックを行う他、カードを1枚ずつ2回交換することが出来ます。また、ファンブルの場合は失敗であるにもかかわらず、技能にチェックをつけ、カードを一枚交換することが出来るのです。 もっとも、いくらチェックやカード交換ができるとは言え、大切な場面でファンブルだけはしたくないものですが……。 語り部 では、君達は再び遭遇することが出来る。しかし猿達の姿は既になく、女性は木の上で切り裂かれて死んでいますね。 穂桷 「遅かったか……(ため息)。とりあえず下ろしてあげよう」 帛絽 式神に下ろさせる。 語り部 ココは女性を下ろしてきますね。女性は近所に住んでいた村人の一人で、凰珠と同じ年頃の娘でした。 穂桷 「(沈んだ声で)一旦村に戻ろう」 凰珠 「う、ん……」
そして俺達は、穂桷と凰珠の強い意見に押され、そのまま闇照道の杜に村人全員を集めて、半ば強引に理源さんに彼らの身柄を預けた。帛絽はいまいち不安そうな様子だったが、俺から見れば、普段のとぼけた様子はポーズにしか思えない。案ずるべきは杜に集められた村人よりもむしろ、俺達自身だろう。
語り部
あの時は不覚を取ったが、今は俺一人ではない。穂桷と帛絽がいれば、こんな奴らに遅れをとることはないだろう。凰珠がいまだ到着していないのが気がかりだが、何とかなるはずだ。 心理的な余裕もあってか、妖怪に操られているとは言え、猿の集団ごとき俺達の敵ではなかった。二匹、三匹となぎ倒し、凰珠が駆けつけた頃には、猿の亡骸が山をなしていたのである。
語り部 ところで、みんな戦闘の基本的なやり方は覚えてるよね? 帛絽 ……。(自信なさそうにキャラクターシートを見る) 語り部 仕方ないなあ。ではここで、戦闘中の行動の仕方をさらっと説明しよう。 戦闘は、語り部によるターンとフェイズのカウントによって進行します。1ターン(10秒)は10フェイズ(1秒)に区切られており、主人公達は1ターンに1回、いずれかのフェイズに行動することが出来ます。 その行動に大きく関わってくるのが『カード』であり、これは通常の52枚のトランプにジョーカー1枚を足したものです。他人によく切ってもらったカードを山札とし、プレイヤーはその内上から5枚を手札として持っています。 カードの数字は行動できるフェイズを示しており、例えば『A』を出せばそのターンの1フェイズ目に、『8』を出せば8フェイズ目に行動することが出来るのです。なお、『J〜K』は『10』として扱います。 また、それぞれのスートにも意味があり、『スペード』であれば『切』という攻撃効果を選択したときの【命中成功率】に、『クラブ』であれば『突』に、『ハート』なら『叩』に、そして『ダイヤ』なら【術の発動率】にそれぞれ+10%のボーナスが得られるのです。 語り部 大体分かったかな? 慣れてくればもっと高度な戦略も出てくるんだけど、とりあえず今必要なのはこのくらいだよ。 帛絽 分かった……ような気がするぞ。 凰珠 へへ〜、凰珠はバッチリだよ! あ、そうだ。凰珠は『凰珠流飛燕剣』の使い手なんだけど、この『飛燕剣』て何? 語り部 どこがバッチリなんだよ。君、知らないで門派を選んだの? 凰珠 だって、名前が格好よかったんだもん。 語り部 ……君の『飛燕剣』は、通常とは少し異なったカードの使い方をするんだ。君には、1ターンに1回という行動の制限がない。 帛絽 え〜、それ、メチャクチャ強いじゃん。 語り部 続きを聞きなさい。でも、普通はカードを1枚使ったらすぐに山札からカードを引ける。つまり手札は常に5枚になるんだけど、『飛燕剣』の場合、カードを使ってもすぐには引くことが出来ない。1ターンに何枚使おうが、カードを引けるのは、そのターンが終わって次のターンが始まる前に1枚のみ。 凰珠 つまり、あんまりたくさん使うと手札がどんどん少なくなるってこと? 語り部 そう。このシステムは、行動したいフェイズと同じ数字のカードを持っていないと行動できない。つまり、長引けば長引くほど、体力が続かなくて不利になっていくわけだ(笑)。 凰珠 う〜ん、意外な落とし穴。つまり『飛燕剣』の使い手は、相手を秒殺しろってことね。 語り部 まあ、そうだね。いずれにせよ、このシステムは基本的に秒殺のシステムなんだけど。 では、実際の戦闘を始めよう! ◆第1ターン 手札 凰珠 2H 3H 3D JC JH 帛絽 AD 3C 8D 9S KC 穂桷 AC 3H 3D 5D 9C 五十里 AH AC 3C 8C 10D ※ここでは全員の手札を公開していますが、実際のプレイでは手札や引いたカードの宣言を行う必要はありません。むしろカードを隠していた方が、緊迫感のある戦闘を楽しむことが出来ます。 H=ハート/S=スペード/C=クラブ/D=ダイア 語り部 それじゃあ、カウントを始めるよ。 第1ターン。1、2、3……。 凰珠 はい! 3Hを出して行動! 穂桷 何だ、凰珠もか。私も3Dで行動だ。山札から引いたカードは4S。 語り部 二人が同時に行動するわけだね。では、『基準値』を教えて。 凰珠 『基準値』??? 穂桷 プレイの前にちゃんとルールを読みなさい。同じフェイズに行動する場合、どちらがより早く行動するかを決めるのが『基準値』。凰珠の場合は身分が『武家』だから、『回避』の値が『基準値』になるの。 語り部 ……セリフをとられちゃった(笑)。で、『基準値』の高い順に行動することになります。二人の『基準値』は? 凰珠 凰珠は23だよ。 穂桷 さすがに亜獣は早いな。私は僧侶なので『法術の基本発動率』が『基準値』になるから、20だ。 語り部 では凰珠からだね。どうする? 凰珠 ん〜。攻撃しようかな? でも、穂桷兄ぃが3Dで行動するってことは、法術を使うんだよね?凰珠、先に行動しない方がいいんじゃないかなあ。 語り部 それじゃあ、行動を遅らせる? 凰珠 へ? そんなこと出来るの? 語り部 『基準値』の高い人は、わざと行動を遅らせることで、それ以降の好きなタイミングに行動することが出来るんだ。早い人の特権というわけだね。 凰珠 それじゃあ、凰珠は行動を遅らせる。がんばれ、穂桷兄ぃ! 穂桷 ならば、私は法術の〔不動縛呪〕を使うぞ。ふふふ、動けなくなってしまえ〜! 私の法術の【基本発動率】が20%、〔不動縛呪〕の技能値が20%、『念珠』によるボーナスで+5%、さらにカードのスートによるボーナスが+10%。合計55%もあるぞ。(コロコロ)ダイス目は18。成功だ。 語り部 〔不動縛呪〕は相手を動けなくする上に、解除するまで1フェイズ1点のダメージを与える法術だ。でも、かけられた側も抵抗を試みることが出来るから、その【抵抗難易度】を出してくれ。 穂桷 私の【法術シフト】は、記憶(許容を越えない値)の19をダメージシフトの表に照らし合わせると、2d6。(コロコロ)出目は6。低かったな〜。 語り部 それでも、このランクの妖怪は簡単にかかってしまうのであった(笑)。でも、6なら1回抵抗を行えば解けるから、このターンのこちらの行動までだね。 穂桷 へえ。何フェイズ目なの? 語り部 えーとね……って、教えるか! たとえ〔妖怪知識〕に成功してても、実際に戦うまで行動フェイズは分からないの! 穂桷 チッ、引っかからなかったか……。 語り部 まったく、なんて奴だ。 こちらは〔不動縛呪〕の効果を受けて『不動状態』になった。さらに解除するまで毎フェイズ1点のダメージを受ける。これは痛い。まず1点受けた。 凰珠 ところで、『不動状態』ってどうなるの? 穂桷 『不動状態』になると『回避』『基準値』が0%になり、さらに『抵抗』以外の行動を一切行えなくなるんだ。 凰珠 らっきぃ! それじゃ、今のうちにタコ殴りにしちゃえばいいんだね! 語り部 まあ、汚古能は最初から『回避』が0%なんだけどね(笑)。 凰珠 意味ないじゃ〜ん! まあいいか。 凰珠は打刀で攻撃しま〜す。ええと、凰珠の打刀の【武器命中率】は57%。……どうしようかな。打刀は『切』が一番追加ダメージが多いんだけど、出したカードはHなんだよね。 よし、自分のダイス目は信用しない!(一同失笑) スートをつけて『叩』で攻撃。(コロコロ)ダイス目は41。ああ〜、切っておけば良かった〜! 語り部 らっきー。こっちは『叩』に強いんだよね。 凰珠 ダメージは『叩』7点だよ。 語り部 ちょこっと食らってしまいましたが、まだまだ。では、カウントを続けますね。 4、5、6、7、8……。 五十里&帛絽 はい! 語り部 また同時か。しかも8フェイズ目はこちらも行動なのだ。 帛絽 ふふん、それだけじゃなく、俺様の式神も行動なのだ! 語り部 4人も入り乱れるの? では、『基準値』の申告をしてください。こっちは18……あっ!『不動状態』だから0です(泣)。 五十里 俺は19だ。カードは8Cで、引いたカードは6C。 帛絽 俺様は12で、式神のココが16。出したカードは8Dで、引いたカードはAH。 五十里 式神の方が早いのか(笑)。19の俺が最初に行動だな。相手が身動きできない今のうちに攻撃しておこう。俺の忍刀による【武器命中率】は30%。『突』の攻撃効果を選ぶので、スートによるボーナスが+10%。40%あれば大丈夫だろう。(コロコロ)……89で、失敗。 帛絽 まったく、頼りねえなあ。次は俺の式神の行動。攻撃するぜ!式神の【命中成功率】は60%だ。(コロコロ)出目が04ということは、クリティカルだな。 語り部 な、何ですと? 帛絽 ダメージは2d8で10点。 語り部 それは痛い! 次は帛絽本人の行動だよ。 帛絽 俺様は〔攻滅符〕の、やはりここは燃える〔火行符〕だぜ。スートボーナスもついて52%だ。(コロコロ)69で失敗。 語り部 優秀なのは式神だけか。では、やっとこちらの行動。〔不動縛呪〕に『+抵抗』じゃ!妖怪は条件さえ満たせば判定が必要ないので、これでやっと行動できるようになった。でもここまでに受けたダメージは6点。かなり痛かったな。 穂桷 チッ、もう解けてしまったか。 語り部 さあ、ここからが本領発揮だぞ! 9、10。 凰珠 は〜い! JCを出して行動する。当然打刀で攻撃。今度は『突』にしてみようかな。出目は93で、失敗。 え〜ん、せっかく行動したのに〜! 語り部 残念でした。それでは、次のターンに進みましょう。 凰珠 カードを1枚引くね。引いたカードは8H。 ◆第2ターン 手札 凰珠 2H 3D 8H JH 帛絽 AH AD 3C 9S KC 穂桷 AC 3H 4S 5D 9C 五十里 AH AC 3C 6C 10D 語り部 それでは、第2ターン。1……。 帛絽 おう! ADで行動だ! 引いたカードは5D。 今度こそ、〔攻滅符〕の〔火行符〕で攻撃だ。(コロコロ)今度は40で成功。ダメージは1d10で5点。 語り部 なるほど、〔火行符〕か。では、炎に包まれながら汚古能に向かって飛んだその符は、汚古能の体の表面ではじかれてしまうね。 「ホッホッホ。効かぬ。効かぬのお」 帛絽 何!? ひょっとして、『火』属性の攻撃は効かないのか!? 語り部 どうやらそのようだねえ。〔妖怪知識〕に失敗した君達には分からなかったけど。 帛絽 うーん、〔妖怪知識〕って失敗しちゃいけない技能だったんだな。くそー、俺の符が……。 語り部 残念でした。ではカウントを進めるよ。2。 凰珠 はい。凰珠が2Hで行動するよ。今度は自分のダイス目を信じて、切る。(コロコロ)25で命中して、ダメージは『切』15点。やったね、ほぼ最大ダメージ! 語り部 うわ、痛い! でも、まだまだいけるぞ。次は3フェイズ……。 凰珠&穂桷 は〜い。 語り部 はい!? また行動するの? 凰珠 だって、せっかくの飛燕剣だし。 穂桷 だって、せっかくだから攻撃したいし。 語り部 はいはい。では『基準値』の高い凰珠からどうぞ。 凰珠 やっぱりここは穂桷兄ぃとの連携を重要視(笑)。大好きな穂桷兄ぃに花を持たせるために、遅らせる(笑)。 穂桷 ではそんな凰珠の期待に応えて、ここでとどめを刺してやるぞ。3Hで行動しているので、三鈷杵で『叩』攻撃だ。(コロコロ)ありゃ、76で失敗。引いたカードは8H。 凰珠 もう〜。せっかく穂桷兄ぃを立ててあげようとしたのに、凰珠の気遣いが無駄じゃない。 凰珠は3Dで行動、14で命中。ダメージは『切』14点だよ。 語り部 ……ではその一撃で、汚古能はすさまじい叫びを挙げながら倒れます。そして、そのままシュウシュウと音を立てて溶けていきますね。 一同 やった〜! 凰珠 宣言どおり秒殺! 語り部 うう、たかだか13秒で決着をつけられてしまった……。
語り部 汚古能というその妖怪は、すっかり溶け去ってしまいます。 五十里 でも、汚古能の言っていたことが気になるな。 「あまり考えたくはないが、食らうといっていたのはもしや……」 穂桷 「まあ、おそらくは雪苗殿のことだろう」 五十里 「千年に一度と、気になることを言っていたな。後で理源さんにでも聞いてみるよ」 穂桷 「ああ、頼む」 凰珠 これでもう終わりかなあ? 一応辺りを確認する。 語り部 もう、何の気配も感じられないね。あの猿を操っていたのも、おそらくはこの汚古能だったんじゃないかな。 そのまま休息を取りつつ、無事に夜が明けますね。 帛絽 「どうにかなったようだな」 凰珠 「あれでおしまいならいいんだけどね」 穂桷 「まあ、そうはいかないだろう」 五十里 「屋敷の者からも零氷や景房に連絡が行くと思うが、穂桷の方からも手紙を出しておいた方がいいんじゃないか?」 穂桷 「何をだ?」 五十里 「ことの顛末を……。身内が危険にさらされたということであれば、教えておくべきだと思うが」 穂桷 「その必要はないだろう。余計な心配をかけるだけだ」 五十里 「知らない安心と知っている不安、どちらがいいかは本人次第だがな。まあいいさ(←穂桷が嫌いなのか、五十里?)」 穂桷 「二人が雪苗殿を迎えに来た時には、改めて私の方から話そう」 後は何事もなさそうなので、寺に帰って休みます。 「帛絽、理源殿にはよろしく伝えておいてくれ」 凰珠 「おやすみ〜」 語り部 では、帛絽と五十里が杜に帰る途中、猿の死体が点々と転がっていますね。 帛絽 「どういうことだ?」 五十里 何による傷ですか? 語り部 刀傷だったり、焼かれていたりするね。 帛絽 「どこかの偉い人が助けてくれたんだな」 五十里 「そうだな……。どこかの、偉い人がな」 語り部 そして君達が杜に入ると、社と呼ばれる建物の周りにはおびただしい数の猿の死体がありますね。 帛絽 「うお! 何でこんなに!?」 語り部 ざっと四、五十匹もいるでしょうかね。 帛絽 とりあえず中に入ってみる。 「大丈夫か!」 語り部 では、村人達はのほほんと円座を組んで座っていますね。 「はあ、何かあったんですか?」 帛絽 「外に猿どもの死体が……」 語り部 帛絽、ここで〔闇照道知識〕で判定してごらん。気づくかな? 帛絽 成功してくれよ。……あちゃ、また失敗。 語り部 では特に気づくことはないね。その内、妖気に当てられた猿の死骸は、日光を浴びてカラカラに干乾び、サラサラと崩れていく。 そこに、手に刀を持った理源がやって来ますね。 「おう、お帰り!」 帛絽 「こちらは大丈夫だったようですね。ところでどうしたんですか、その刀?」 語り部 「ちょっと手入れをな……」 帛絽 「そうですか」 猫を探す。キョロキョロ。 語り部 足元にいるよ。 帛絽 「偉いな〜。こんな小さな体で、あんなにいっぱい。お前は炎も吐けるのか。そうかそうか」(一同 笑) 語り部 「そういうお前らの方はどうだったんだ?」 帛絽 「汚古能が出まして。そいつを倒しました」 語り部 「少しは出来るようになったんだな。多分、そいつがこの一団のボスだったんだろう。まあ、しばらくは安心だ。知り合いの闇照道に頼んで結界でも張ってもらうよ」 帛絽 「それがいいですね」 語り部 「ご苦労だったな。今日はゆっくり休め。村人も帰すぞ」 帛絽 「そうですね」 五十里 「ところで理源さん、闇照道の知識がないのでお聞きしたいのですが、今年は千年に一度の年回りとか、何かそういうことがあるのでしょうか」 語り部 「特にないと思ったが……」 五十里 「高宮家に現れた汚古能という妖怪が、そのようなことを言っていたもので」 語り部 「後で調べてみるよ。俺は疲れたんで酒を飲んで寝る。お前らも休め」 村人達もそのまま帰っていきますね。 帛絽 「俺達も寝るか」 あ〜あ、使った符を作り直さねえとな。寝れねえよ〜。 五十里 「そうだな、休もう」 火薬を補充したら、俺はさっさと休む(笑)。
全く、奇妙と言うしかない事件であった。 妖怪などというものが現実に存在した。その事実もさることながら、俺達にとっては近しい存在である雪苗が、その妖怪に狙われたのだ。『千年に一度』という言葉にその理由の一端を窺うことは出来たが、それも推測の域を出ないものだった。 この騒ぎは、雪苗の耳にも届いたろうか。 知らぬ間に事件の当事者となっていた彼女は、この事実を前に怯えてはいまいか。 だが例えそうであっても、それを癒すのは俺の役目ではない。どうせまた、穂桷が必死になって彼女の心を支えようとするのだ。 雪苗には、穂桷がいる。 影に生きることしか知らぬ、まして普通の人間でもない俺の出る幕ではないのだ。 そんなことを考えている俺自身が何となく腹立たしく、俺は板張りの床を蹴った。 俺は忍びだ。余計な感情など足枷にしかならない。 俺は主の大切な血族を守った。その事実があればいいではないか。 それでもまだ何かを訴えようとする心を無理矢理押さえつけ、俺は目を閉じた。 終わったのだ。この事件は、終わった。 ――しかし。 俺はまだ知らなかったのだ。 この事件が、俺達を運命という大きなうねりの中へ巻き込んでいく、ほんの始まりに過ぎなかったことを |
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