はじめに 
序文・T 序文・U 登場人物
第1話 第2話 第3話   最終話
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CyberPank TRPG CHAOS PLAY
 〜千涸びた翅で遠い空を征け〜

 第一話 さなぎ達の夜
 

 何も見えない。
 何も聞こえない。
 ここは、どこだろう。
 俺は、誰だろう。
 そもそも、俺は本当に存在しているのか。
 深い闇の中に溶けた俺は、闇そのものではないのか。
 ―何かが、飛んでいる。
 何もかも包み込む闇の中で、それは静かに光を放ちながら俺の目を奪う。
 破れかけた翅を懸命に動かしながら近付いて来るそれは、一羽の揚羽蝶だった。
 ―目ヲ覚マセ。
 声なき声で語りかけるその蝶には、左の翅がなかった。

 またあの夢だ。
 見慣れた薄汚い天井を見上げ、俺は溜め息をついた。
 この5か月、あの夢を見続けている。いや、もっと以前から見ているのかも知れないが、確かなことは分からなかった。
 俺には、記憶がない。
 過去も、名前も、そして思い出も、俺には何もなかったが、俺が失ったのはそれだけではなかった。
 左腕を持ち上げ、目の前にかざす。精巧に作られてはいるが、これは俺が生まれた時から具えていたものではない。
 夢に現れるあの蝶のように、俺は左半身を失っていた。
 俺の面倒を見てくれた医者は、爆発に巻き込まれたのだろうと言った。そして、それでもなお生きている俺の生命力に驚嘆したと。
 俺自身の皮膚から培養した人工皮膚を用いたという機械の体は、見ただけでは生身との違いを認めることなど出来ない。だが、それでも不自然さを拭い去ることが出来ないのは、半ばとはいえ、生身の体が残っているためだろう。いっそ全身がサイボーグになってしまえば、こんな風に感じることはないのかも知れない。
 不意に、部屋に備え付けられた電話が鳴り始める。受話器を取ると、耳慣れた声が響いてきた。
「魔宮か? 何だ、まだ部屋にいやがったのか」
「……アズラエル?」
 何もかもを失っていた俺に、魔宮勇樹という名と半身、そして仕事を与えてくれた男である。巷では随分と有名な人物だったらしいが、奴の経歴など俺はまったく知らなかった。
「まったく、余裕だな。他の卒業生達は皆とっくに仕事を受けて出て行ったぞ」
「ああ、忘れてた」
 ベッドに起き上がって、俺はそのまま受話器を置いた。まだ何か言っているらしかったが、小言は会ってから聞けばいいことだ。
 溜め息をついて、部屋を見回す。
 殺風景な部屋だ。だが、5か月暮らしたこの部屋とも今日でお別れとなる。
 この部屋は、ハンターズ・ギルドの訓練生専用の宿舎なのだ。訓練を終えてめでたくハンターとしての一歩を踏み出すことになった俺には、もはや関わりのない場所だった。
 もともと、ここが自分の居場所だという実感もない。どこへ行こうと、その感覚に変わりはないのだろう。何もかもを思い出さない限り。
 俺はゆっくりとドアを開けた。ひんやりとした空気が廊下から流れてくる。
 そして俺は、その冷ややかな場所へと踏み出した。



◇ゲーム・マスター(以下GM) 
 さて、魔宮勇樹くん。君は現在、D1エリアにある『セクションD・ハンターズ・ギルド本部』の一室にいます。君の前には、君がここで訓練を受けるに当たって非常に世話になった、ハンドルネーム『アズラエル』という人物が座っていますね。かつては凄腕のハンターだったというアズラエルは、体力の衰えを感じて一線を退いてから、このハンターズ・ギルド本部の訓練施設の所長として務めています。
 ちなみに、記憶と左半身を失っていた君に名前とサイボーグの半身を与えてくれたのは、このアズラエルです。
 そして今、君と向かい合って座っているアズラエルの前には、3枚の写真が並べられている。
「ハンター・チーム『クロック・オブ・アリス』だ。知っているな?」

◇魔宮勇樹(まみや・ゆうき/以下魔宮)
 『クロック・オブ・アリス』?

◇GM
 新宿を根城とするハンター・チームの中では『ナイト・ウォーカーズ』に次いで有名だったチームです。
 君がここで訓練を受け始めたのは丁度5か月ほど前からなんですが、その時には、ある事件でサムライを失っていたということで、活動を休止していました。すでに解散したとも言われていますね。
 非常に有能なチームだったため、本部の方も何とか彼らを復帰させたいと言う意図はあったらしいのですが、いまだに活動はしていないようです。
「というわけだ。言いたいことは分かるな?」

◇魔宮 
「分かりません」

◇GM 
「(咳払い)お前には、そのチームに入ってもらいたい」

◇魔宮
「私がですか?」

◇GM
「ああ。お前ほどの腕なら、熟練のハンター共にも引けを取らないと思ってな。本部としても、奴らをこのまま休ませておくのは惜しい。何とか、奴らをハンターとして再起させてくれ」

◇魔宮
「……分かりました」

◇GM 
アズラエルは少しほっとしたように笑う。
「まあ、自信を持ってやって来い。初めから何もかもうまく行くわけなんかないから、多少の失敗は恐れないで、ガンガンいけよ」

◇魔宮
頷きます。

◇GM
すると、アズラエルは少し真面目な顔になりますね。
「体の調子が悪くなったら、いつでもメンテナンスに来るといい」
 君の体は左半分が軍事用サイボーグなんですね。でも、軍事用と言っても戦闘行為に適してるというだけで、特別なデータの変更はないけど(笑)。

◇魔宮
な、何ですと?

◇GM 
 ちなみに、サイボーグになっていない方の右肩にはタトゥーがあります。揚羽蝶の形をしたもので、まるで今の君の状態を表しているように、左半分が焼けて潰れていますね。

◇魔宮
 それは……覚えているんですか?

◇GM 
 いや、こんなものを彫った記憶はないね。

◇魔宮
 うーん。よく分からないので、普段は服で隠しています。

◇GM
 はい、分かりました。
 で、アズラエルは少し心配そうに言いますね。
「無理だけはするなよ」

◇魔宮
「ああ、分かってる」

◇GM
「そのチームなんだが……奴らもなかなか、一癖も二癖も三癖も四癖もあるような連中だから、苦労するとは思うが……」

◇魔宮
「ああ、何とかやっていくよ」

◇GM
 そうすると、アズラエルはほっとしたような顔で、君の方に一振りのムラマサを差し出します。

◇魔宮
 ? 受け取る。

◇GM
「そいつは、俺が昔使ってたものだ。このまま錆びさせるのも可哀相だからな。お前にやる」

◇魔宮
 何! では、ムラマサ・バージョンX(笑)。

◇GM
 いや、そうなんだけどさ(笑)。かなりこった意匠のもので、君がギルドから支給された物なんか比べようもないくらい上質の刀です。
「愛弟子へのはなむけと思って受け取ってくれ」
 そう言ってから、アズラエルはちょっと照れくさそうにそっぽを向きますね。
「俺にとってはお前は子供みたいなもんだからな」

◇魔宮
「(冷たく)用件はそれだけか?」

◇GM
「……お前も、冷たい奴だなあ」

◇魔宮
「別に。それで、そいつらはどこにいるんだ?」

◇GM
「ああ、新宿のフレア・ブリットに集めてもらっている。そっちに向かってくれ」

◇魔宮
「フレア・ブリットだな。分かった」

◇GM
「車の手配はしておいた。正門の前に待たせてある。
 さて、俺は他の悪ガキ共のところに戻るか。
 さあ、行ってこい。期待してるぞ」

◇魔宮 
 それじゃ、早速向かいま〜す。

◇GM
 そういうわけで、君は車に乗り込み、一路新宿へと向かった。



 彼らに出会うためには、時を半年ほど遡らねばならない。
 なぜなら、彼らは今、ここにはいないのだから。



 それは、ほんの幻に過ぎなかったのだろうか。
 常に死と隣り合わせだった僕らに、安らぎを求めることなど叶わなかったのか。
 それでも、幸せだった。
 幸せ?
 いや、そうではないのかも知れない。
 幸せという言葉の意味を、知らなかったから。
 彼女は、どうだろう。
 彼女ならば、知っていたろうか。
 血なまぐさい世界に生きながら、清らかなままであった彼女なら。
 だが、もう遅い。
 ここには、誰も帰って来ない。
 もう、誰も。


 夕刻を過ぎ、情報を求めるハンターと酒を求める常連客とで、新宿の名物バー『フレア・ブリット』はにわかに賑わいを見せていた。TVからは事件を知らせるキャスターの声が淡々と響き、新たな事件の気配にハンター達が目を光らせている。
 だが、そんな世間を騒がせる事件も、今日の僕らには関係がなかった。
 卓を囲む、いつもの顔触れ。結成して2年足らずではあるが、今では家族以上に親しい仲間達である。
 ハンター・チーム『クロック・オブ・アリス』。
 新宿のハンターで、この名を知らぬ者はないだろう。この2年、休むことなく働き続けて手に入れたのは、新宿トップクラスの名声と信頼だった。
 いつか、新宿一のハンターと呼ばれる『ナイト・ウォーカーズ』を超えるのが、このチームのリーダーを務める僕の密かな野望でもある。
「何か考え事ですか、駒林さん?」
 傍らでそう言ったのは、端正な顔にあどけなさの残る、愛らしい少女だった。モデルにでもなれば大成したであろうと思われる彼女は、我がチームの紅一点であり、また大切な主戦力でもある。
 『ホワイト・ラビット』イリス。
 武器を握らせれば凶悪なテロリスト相手に一歩も引けを取らず、さらには一癖も二癖もあるチームのメンバーをその笑顔一つでまとめてしまう、頼もしい存在だ。彼女がいなければ、このチームがここまで登り詰めることなど出来なかったろう。
「いや、何でもないよ。イリスももうすぐ17歳になるんだな、と思ってさ」
 彼女は3日後、誕生日を迎える。しかし、残念なことに当日は仕事の依頼が入っていたため、少し早めではあるが、こうして彼女を祝うことになったのだ。
「ま、17歳なんてまだまだ子供だよ、子供」
 そう言ったのは、ライナーのアルカ・ベラ。チーム最年長でありながらも、そうした年齢の差を感じさせない男だ。ハンドル・ネームである『ザガンの風』の名は、彼の愛車である装甲ジープとともに、DC2ラインを根城にする暴走族を震え上がらせている。
 以前、『チェイスでは負けたことがない』と豪語していたが、確かにこの2年、アルが誰かに追い抜かれるところなど見たことがなかった。
「アルさんてば、いつもそうやって子供扱いするんだから。私だって、ちょっとずつ大人になってるんですからね」
「大体、アルだって半分子供みたいなものだろ」
 それまで黙々とグラスを傾けていたウォルフが口を挟んだ。
 ウォルフガング・ミューラー。ハンドル・ネームは『ライカンスロープ』。
 僕は、正直言って彼が苦手だ。エスパーという、数式で推し量ることの出来ない人種は、やはり人の恐怖を煽るものなのだ。ことに、ウォルフには僕の理解を超える部分が多々見受けられる。
 真夏でもロングコートを羽織り、ライターもなしに煙草に火を点ける。激昂すれば制御しきれなくなった超能力で辺りのものを破壊し尽くし、容赦なく人を傷つける。
 もっとも、これはエスパーというよりも、ウォルフに対する恐れなのだろう。今でこそハンターに収まっている彼だが、かつては殺し屋として、ハンターに追われる身だったのだ。
 何でも、かつてハンターに捕まった折に、その超能力の強さが惜しいということで処刑が中止になり、制御装置を埋め込まれてハンターとしての道を歩み始めたのだというから、もはや僕には理解出来ない世界である。
 だが、そんなウォルフに対してさえ、イリスはごく普通に接している。彼女の人懐っこさがそうさせているのか、彼女はウォルフを恐れることなく、言いたいことは言い、甘えもしていた。
「何だお前ら、珍しいじゃないか。いつもはこんな所じゃなく、もっと高い店で飲んでるだろうに」
 料理を運びながら嫌味を言いにきたのは、このフレア・ブリットの店主、エイジ・ダテである。新米ハンターの頃からよく世話になった人だが、最近はウォルフのわがままでほとんどこの店に飲みに来ることがなかったから、嫌味の一つくらい言われても当然だろう。
「俺はもっと落ち着いた所で飲みたかったんだが、こんな所でもイリスがいいと言うんでな」
 そう答えて、ウォルフは1人で空けてしまったボトルをダテさんの方に放り投げた。空中で上手くキャッチして、ダテさんはニヤリと笑う。
「お前らはともかく、イリスちゃんはやっぱり可愛いなあ。よし、その可愛さに免じて、ボトルを1本サービスしてやろう」
 残念ながら、その酒がイリスの口に入ることはないのだが、イリスは一向に構わない様子だった。たとえ何も出なくとも、彼女は祝いの言葉だけで歓喜したことだろう。
 この祝いの席をセッティングした時、彼女は涙ぐみながら何度も礼を言ったものだ。
 産まれてすぐに孤児院の前に捨てられていたという彼女には、肉親がいなかった。それでも彼女が素直で人を信じやすいのは、彼女を養女として迎え入れたあるハンターとその妻が、彼女のことを実の娘のように大切に育てたためであろう。彼女は大好きな養父と同じハンターを目指し、15歳という若さでハンターズ・ギルドの試験をパスし、見事目標を果たしたのである。
 ハンターとなった今は、自分が稼いだお金で両親に楽な暮らしをさせることが、一番の目的だと語っていた。
 そんな彼女が、僕は愛しかった。
 ダテさんが新しいボトルを置いてテーブルを離れると、何となく会話がとぎれた。アルは箸で豆を掴むのに必死になっているし、ウォルフは黙々とグラスを傾けるのみ。
 間が持たなくなり、とにかく何か話そうと口を開きかけた時、彼女の唇から笑みが零れた。
「……何だか、嬉しいですね。こうやって、親しい人達に自分の産まれた日を祝って貰えるのって」
 彼女の言葉は少し重く、僕は慌てて空気を変えようとした。
「今日は、まだ前祝いだから。仕事が終わって戻ってきたら、また本格的にやろう」
「何言ってやがるんだ。俺はすっかり本格的だぜ」
 相変わらず箸と格闘しながら、あるがイリスに笑いかける。その言葉の後を継いで、ウォルフが冷ややかな声をアルに浴びせた。
「本格的なのはお前の頭の中身だけだな」
 僕らの関係を知らない者は、ウォルフが僕らを嫌っているように見えるかも知れない。だが、この2年でウォルフも随分と柔らかくなった。初めの頃は鋭い針のようで、仲間である僕らですら近付くのも恐ろしかったから、それを考えると大した進歩だ。もっとも、かたくなな彼を解きほぐしたのは僕らではなく、イリスの笑顔に他ならないのだが。
「まあ、3日後の仕事も大して難しいものじゃないし、情報もバッチリ。さっと片付けたら、そのままバーに直行さ」
 愛用のパソコンを指で軽くたたきながら、イリスに目を向ける。
 3日後の仕事は、テロリストの殲滅だった。さる企業の思惑が絡んでおり、すぐに退治されては困るという。そのため、テロリストの殲滅作戦が3日後、という奇妙な依頼になったわけだが、その相手もさほど恐ろしい輩ではなかった。
 『サースト・バタフライ』。総数10名にも満たない小さなテロ集団で、右肩に刻まれた揚羽蝶のタトゥーから『スワロウテイル』と呼ばれているリーダーも、腕っ節は強いものの、僕らの手に負えないレベルではなさそうだ。
 仕事が終われば、またいつも通りの日常がやってくる。
 いつも通り、イリスが僕に笑いかけてくれる。
 その、はずだった。


 侵入は、あっけないほど簡単だった。
 旧市街にある廃ビルの一つに『サースト・バタフライ』は根城を持っていたが、そこを守る連中はすでに全員が地面を舐めている。イリスとアルが5名ほどの見張りを倒すのに、10秒と掛からなかった。相変わらず、2人は手際がいい。
 ビルの内部も、僕が事前に手に入れた情報の通りだった。難しいことなど何もない。
 あとはリーダーである『スワロウテイル』を残すのみ。
 本当に、拍子抜けするほど簡単な仕事だったのだ。
 ビルの最上階で1人待ち受けていた『スワロウテイル』は激しく抵抗したが、歴戦のハンター・チームに敵うはずなどない。『スワロウテイル』は傷の痛みに耐え兼ね、よろめいた。
 終わった。
 そう、思った。
 それが油断を誘ったのか。
 確かに、僕はその瞬間、警戒を緩めてしまった。敵と対峙しながら、僕は気を抜いてしまったのだ。
「駒林 −っ!!」
 ウォルフが声を荒げたのは、何か月振りだったろう。その怒声が僕を現実に引き戻した時、目の前には『スワロウテイル』の繰り出した剣の切っ先があった。
 かわせない。
 鋭い痛みを予感し、僕は思わずきつく目を閉じた。
 帰れないのか。僕だけ、帰ることが出来ないのか。
 しかし、そう思った瞬間。
 僕の体に触れたのは、温かな感触だった。
 恐る恐る、目を開ける。
 柔らかな金色の髪が見えた。
 埃と火薬と、そして彼女の髪の匂いの中に、血の匂いが混じった。
「イリス……!」
 僕にしがみつくようにして、彼女はそこに立っていた。今にも泣き出しそうな顔で。
 そして、彼女の胸からとめどなく溢れる鮮血。
 その胸に、鋭い剣の切っ先が覗いていた。
 彼女の肩の向こうで、『スワロウテイル』が剣を引き抜く。同時に、イリスの体が僕の胸に倒れ込んできた。
「怪我はありませんか……駒林さん」
 これほどに深い傷を受けながら、彼女はそれでも僕の身を案じるのか。
 僕のことを、責めようともせずに。
「何も……僕のミスを……」
 絞り出したその言葉は、彼女に届いたのだろうか。
 イリスはふと悲しげな笑みを漏らした後で、ゆっくりと瞼を閉じた。その体が急激に力を失う。彼女の胸から溢れる血が、僕の全身を染めた。
  −僕が、殺した。
 耳の奥で、心臓の音がやけに大きく響く。
 彼女の肩越しに、踵を返し逃げてゆく『スワロウテイル』の姿が見えた。
 その右肩に刻まれた揚羽蝶のタトゥーは、彼女の血に染められながら、誇らしげにその翅を広げていた。



◇GM
 イリスが駒林の腕の中に倒れ込むと、『スワロウテイル』はよろよろと後ずさっていく。どうやら、この機に逃げるつもりのようですね。

◇ウォルフガング・ミューラー(以下ウォルフ)
 ……逃がすものか。追いかける。

◇GM
 必死に逃げるものの、すでに満身創痍の『スワロウテイル』はすぐに追いつかれてしまう。すると、向こうは銃器を構えてなおも抵抗を始めますね。

◇ウォルフ
 《サイコ・スピア》を死ぬほどぶち込む。自分のことなど顧みない。

◇GM
 (笑)。と、激しい攻防が繰り広げられているんですが、その時突然、この建物の一角で爆発が巻き起こります。

◇ウォルフ
 気付かないなあ。キレてるから(笑)。

◇GM
 階下で発生したその爆発は、連鎖反応的に各所で誘爆し、だんだん君達のいる所まで近付いてくる。このままでは全員巻き込まれてしまうでしょうね。

◇アルカ・ベラ(以下アル)
 「駒林、イリスを頼む。俺はウォルフを」
 走り出す。

◇ウォルフ
 狂ったように《サイコ・スピア》を放ちまくってる。

◇アル
 顔をぶん殴る。

◇ウォルフ
 じゃあ、まるで敵を見るかのような目で睨み付ける(笑)。

◇アル
 「爆発が迫ってる。ここは引くぞ」

◇ウォルフ
 『スワロウテイル』は?

◇GM
 かなりボロボロで、ずりずりと床を這いずっていますが、このままだと死ぬでしょうね。

◇ウォルフ
 とどめを刺す。

◇GM
 では、君の最後の《サイコ・スピア》で奴は倒れ込み、動かなくなります。

◇ウォルフ
 うう、もっとやりたい(笑)。

◇アル
 襟首掴んで引っ張る。

◇ウォルフ
 「分かった、行こう。イリスは?」

◇山添駒林(やまぞえ・くりん/以下駒林)
 彼女を背負って、よたよたとそちらに歩いて行きます。

◇GM
 すでに息はないね。まあ、死に顔は綺麗です。

◇アル
「とにかく、出よう」

◇ウォルフ
「手を」
 みんなの手を取って《テレポーテーション》で脱出します。

◇GM
 では、その爆発迫るアジトから、君達は何とか脱出を果たした。

◇駒林
「イリスが……イリスが」

◇アル
「やっぱり、向いてなかったんだな」
 頭を撫でる。

◇駒林
「まだ、イリスは……今日で17になった……ばっかりなのに……」

◇ウォルフ
 俺達、チームを組んで2年でしたっけ。

◇GM
 まあ、2年足らずです。それで『ナイト・ウォーカーズ』に次ぐだけの名声と実力とを手に入れた。

◇アル
「……引き上げよう。まだ、仕事は残っている」

◇ウォルフ
「報復の相手はもう死んでしまった」
 潰れたビルを指差す。
「お前らと組んで2年、何度後悔したことか。三流と組むからこうなるんだ。俺はこれから1人でやる」

◇駒林
 ゆっくりと顔を上げて不思議そうに見る。

◇アル
「無理を言うな。俺達がいなけりゃ、お前は何も出来ないぞ」

◇ウォルフ
「お前に俺が殺せるか? 俺はお前を殺せるぞ」
 バリバリと電気が走る。興奮すると周りに被害起きるから、俺(笑)。

◇アル
 怖いよ(笑)。銃を構える。

◇駒林
「やめろ! ……イリスの前で、そんなことはやめてくれ」

◇ウォルフ
 静まる。

◇アル
 銃を収める。

◇ウォルフ
「……言っただろう。三流と組むつもりはない」

◇アル
「それはお前が決めることじゃないさ。俺達は組織の人間だ。1人で身勝手なことをやれば、ハンターじゃなくテロリストになってしまう」

◇ウォルフ
 そうとは限らないって。1人でやってる人もいるし。

◇アル
 いや、君の性格上(笑)。

◇ウォルフ
 なるほど、確かに。元殺し屋だしね。ハンターに捕まって殺されるところを、制御装置埋め込まれて助かった人だから。
「それでも……お前達と組むよりはいい。イリスも、俺達と組まなければ長生きできたろう。アリスの時計はもう、止まってしまったんだ」

◇アル
「物語になったアリスは、永遠に子供のままだ。……これで良かったんだよ」

◇ウォルフ
「よかっただと!?」
 胸倉を掴む。

◇アル
「大人になるよりも、このまま死んだ方が楽だったんじゃないのか?」

◇ウォルフ
 変わってるな、おい。ろ、ロリータ、なの(笑)?

◇アル
 んなわけないだろ(笑)。

◇ウォルフ
「なぜお前がそんなことを言えるんだ?」

◇アル
「大人になってからいい思いなんか一つもしたことがなかったからな」

◇ウォルフ
 ちょっと共通。ぱっと手を離す。

◇駒林
「駄目だよ、もう……。僕達はまとまらない」

◇ウォルフ
「初めからまとまってなかったさ。イリスがいなければな」

◇駒林
「三流が、それでもリーダーの役目を負ってきた、僕の責任だな。三流は、僕だ」

◇ウォルフ
「そうだな」
 チームのエンブレムを外して駒林に投げ付けてから、くるりと背を向けてスタスタと歩き始める。

◇アル
 俺も外して、
「奴とやり合うのは嫌だからな。俺はハンターを辞めるよ」

◇ウォルフ
 俺はソロ活動。ハンターとしてね。

◇駒林
 2人のエンブレムをそろそろと拾って、イリスを何とか背負って報告に向かいます。

◇GM
 こうして君達はイリスという大きな存在を失い、『クロック・オブ・アリス』は幻のチームとなってしまいました。その後君達はそれぞれに仕事を見つけ、それから半年ほどの時間が流れます。


 それは、本当に唐突だった。
 ハンターズ・ギルド本部の情報部に勤めていた僕は、半年振りに『クロック・オブ・アリス』というチーム名で呼ばれることに、奇妙な違和感を覚えていた。今はもういないイリスが、僕の中に大きな影を落としているからだろうか。
 だが、本部がそんな一ハンターの感情を汲み取ってくれるはずもなく、上部からの通達を行うその事務員の声は、ひどく機械的だった。
「……フレア・ブリットに集合ですね。了解しました」
 受話器を置きながら、僕は天井を仰いだ。果たして、ウォルフとアルは現れるのだろうか。
 ウォルフはあの時自分で言った通り、1人でハンターを続けていた。任務は完璧に遂行していたものの、やはりその影に見え隠れする残忍さを拭い去ることは出来ない。彼にとっては、イリスこそが止め金だったのだろう。
 一方、アルはタクシーの運転手となり、血なまぐさい世界からは足を洗っていた。
 もはや、『クロック・オブ・アリス』などというチームは存在していないのだ。
 イリスは、悲しむだろうか。
 僕らがここまでバラバラになってしまったことを、嘆いているだろうか。
 もしもあの時、敵の刃に倒れたのが僕であったなら―
 『クロック・オブ・アリス』は、今も存在するのだろうか。



◇GM 
 さて、ハンターズ・ギルド本部の呼び出しに応じてフレア・ブリットへとやって来た駒林くん。店に入ると、カウンターの所にアルの姿が。カウンターでは、ダテさんが君の姿を見て手招きする。
「久し振りだなあ。しかし、少し老けたんじゃないか?」

◇アル
「老けた? 日に焼けただけだ(彼は黒人)」

◇GM
「ははは、そういうことにしといてやるか。……奥で待っていてくれ」
 そう言って、奥の個室の方を指差しますね。

◇駒林
 じゃあ、アルの後から部屋に入る。
「タクシー、やってたんだって?」

◇アル
「まあ、一番性に合ってるからな」

◇駒林
「客に迷惑かけてたんじゃないだろうな」

◇アル
「まさか。客に迷惑かけられてるよ」

◇駒林
「アルが迷惑がるような客っていうのも、会ってみたいもんだね」
 かなり性格が暗くなってる(笑)。

◇GM
 そのようにして、君達は少しの間ここで待たされることになる。新しい出会いが、君達に何をもたらすかも知らずに……。


 心地好い車の揺れに眠気を誘われながら、俺は何となく窓の向こうを流れる景色に目を向けていた。同じような色のビルばかりが建ち並ぶ、無機質な町並み。
 ここにも、俺の感情を揺さぶる景色はない。
 いつか、思い出すことは出来るのだろうか。
 瞼を下ろそうとする睡魔に、俺は逆らわなかった。



◇GM
 さて、魔宮くん。夕方、君はフレア・ブリットに到着しました。君を起こしてくれた運転手は「ご苦労さん」とか言いながら帰って行きますね。
 というわけで、君は今、噂に名高い新宿のハンターの溜まり場、ハンターズ・ギルドが出資しているというフレア・ブリットの前に立っている。

◇魔宮
 扉を開けて入って行きましょう。

◇GM
 中はそれなりに客が入っているようですね。

◇魔宮
 じゃあ、マスターのダテさんのところに行きます。

◇GM
「いらっしゃい」
 そう言いながら、ダテさんはすっとメニューを出す。

◇魔宮
 ええと、チーム名。『壊れたアリス』だっけ。

◇GM
 『クロック・オブ・アリス』(笑)。

◇魔宮
 差し出されたメニューをそのままピンと弾き返して、
「『アリス』はどこだ?」

◇GM
「ここで一杯くらい飲んでおくのが大人ってものだぞ」
 そう言いながら、彼は奥の方に案内してくれますね。で、奥の方にはあんな2人が待っている(と、アルと駒林を指す)。
 ダテさんは君達にコーヒーを出しながら、
「本部から連絡はあったと思うが……『クロック・オブ・アリス』の欠員を補充したいそうだ。そろそろ本格的に活動を再開してほしいということでな。ええと、名前は……」

◇魔宮
「魔宮だ」

◇GM
「だそうだ」
 ちなみに魔宮くんはもう1人の写真を渡されたが、その男はいないようだ。

◇駒林
「山添駒林だ」

◇アル 
 取りあえず奴のことを無視して、ダテさんに、
「俺はここに断りに来たんだけどな」

◇GM
「どうしてもか? 実際、お前達ほどのハンターとなると、どこにでもいるもんじゃない。もったいないと思うんだが」

◇アル
「それは、教育の方に問題があるんだな。俺達のような奴がいたら、かえって困るだろうさ。俺達はもう使い物にはならない。俺達は廃業さ」

◇GM
「そう思ったら、誰もお前らの所にこんな話は持ち掛けねえよ」

◇アル
「だって、ウォルフなんて……テロリストになっちまったんだぜ」

◇ウォルフ
 なってないよ(笑)。真面目にやってるって。

◇アル
「……なっちまったんだよ(笑)」

◇駒林
「1人でちゃんとハンターやってるよ、ウォルフは」

◇アル
「見て来たようなこと言うなよ。……兄ちゃんも災難だな(魔宮に)」

◇魔宮
 じゃあ、そのままガッと椅子を引いて、机の上にどんどん、と足を乗っける。

◇駒林
「ウォルフは来ないし、アルは断ると言うし、確かに最初から人選に問題があったかも知れませんね、ダテさん」

◇GM
 ダテさんはくしゃくしゃと頭をかいてこう言う。
「正直、お前がこの程度の連中とは思わなかったよ。……魔宮っていったか、悪かったな、こんな連中に引き合わせちまって」

◇魔宮
 僕は、『クロック・オブ・アリス』が解散するに至った事件について知っているんでしょうか。

◇GM
 まあ、人伝に聞くくらいは。メンバーのサムライが死んだよ、って。

◇魔宮
 なるほど。
「そうだな。リーダーがいなくなったんじゃ仕方ないさ」

◇GM
 ダテさんはちらっと駒林の方を見る。アズラエルには、彼がリーダーだと聞いてるよ(笑)。

◇魔宮
「ああ、悪い。あんたがリーダーだったっけ」

◇駒林
「昔はな」
 伸ばした前髪を通して魔宮を見る(笑)。

◇一同
 暗〜い(笑)。

◇駒林
「僕達は、もう『クロック・オブ・アリス』とは名乗れない」

◇魔宮
「名乗らなきゃいいじゃん」

◇一同
 ……。

◇GM
 長く重苦しい沈黙に、ダテさんは後のことは知らんとばかりにその場を立ち去る(笑)。

◇アル
「言われっ放しも腹が立つだろう。俺が殴ってやろうか」

◇魔宮
「出来るのかよ。ただのタクシー野郎が」

◇アル
 睨んで構える。

◇魔宮
 ハンターは一般市民に手を出しちゃいけないんだよね? 一般市民はハンターに手を出しちゃいけないの?

◇GM
 いや、そんなことはないと思うよ(笑)。

◇魔宮
「悪いけど、一般市民には手を出せねえんだ(一同 笑)」
 それから駒林の方に目を移して、
「あんたもやる気ないんだったら、ハンター辞めたら?」

◇駒林
「……いや、ハンターは辞めない」

◇魔宮
「で、何すんの?」

◇駒林
「情報部にいたのは、ただの休暇だと思ってる。ハンターを辞める気はない」

◇魔宮
「じゃあ、いつハンターに戻るんだよ。戻る意志がないんだったら一緒だろ?」

◇駒林
 わざとゆっくりギャロットを抜いて、
「僕は今この時からハンターだ。もしお前がテロリストなら、この場で撃てる」

◇魔宮
「本当に撃てるのかよ、腰抜け君」

◇駒林
 じゃあ、首の横に狙いを定めて、引き金を引く瞬間に銃口をちょっと上に向けて、撃つ!

◇GM
 ではその銃弾は天井にめり込む。ちなみにここはちゃんと防弾処理されてます。

◇魔宮
 微動だにしないで、
「良かったな、俺が動かなくて。俺が本当にここで敵になってたら、あんた死んでたぜ。所詮お前もチキン野郎さ。そいつと一緒にタクシー会社でもやってな」

◇駒林
 くそ〜、殴りかかる(笑)。

◇魔宮
 それに反応して、自分が座ってた椅子を掴んでぶん殴る。手加減しながら。

◇駒林
 それはかわしきれないだろうな(笑)。壁に吹っ飛びます。

◇魔宮
「優秀なチームだって聞いてたけど、所詮このチームを引っ張ってたのは、死んだその人だったんだな」

◇アル
「……そうだよ」

◇魔宮
 そうだよって言われてしまった(笑)。

◇アル
「彼女が死んでしまったことで、俺達は一度終わってしまったんだ。それとも何か? お前は俺達がまたハンターに戻れるような凄いものをもって来たって言うのか?」

◇魔宮
「結局おんぶに抱っこかよ。てめえじゃ何にも出来ないんだな。お前の母ちゃんが死んじまったんなら、俺が新しい母ちゃんになってやろうか」

◇ウォルフ
 何て性格の悪い主人公だ……(笑)。近年稀に見る性格の悪さだな。

◇駒林
 再びギャロットを構えて足下に撃つ。
「イリスのことは言うな」

◇ウォルフ
 自分で言ってんじゃん(笑)。

◇魔宮
「へえ。イリスって言うんだ、お前の母ちゃん」

◇アル
「それは一度決着のついたことだ」

◇魔宮
「どう決着がついたんだ?」

◇アル
「決着は今つける」
 素手で構える。
「俺が勝ったら抜ける」

◇魔宮
「俺が勝ったらどうする?」

◇アル
「お前のケツの穴でも舐めてやるよ」

◇魔宮
「残念だが、男に興味はねえ」

◇アル
 殴る(笑)。


 口ではなんと言おうと、俺には目の前の相手が充分な力量を備えていることが分かっていた。手加減などすれば、自分が地を舐めることになるだろう。
 新宿トップクラスの名は伊達ではないようだ。
  ―楽しみだ。
 そんな感情が沸き起こる。
 誰かと拳を交えるのは好きだった。
 記憶は戻らなくとも、俺はずっとこの感覚を楽しんでいたような気がする。剣戟と硝煙の匂いとに満たされた場所で、俺はずっと過ごしてきたような―
 奴の拳が、俺の頬をかすめた。
 心地好い痛み。強い相手でなければ、こうはいかない。
 俺は渾身の力を右の拳に込めた。
 奴の拳が、俺の頬を目掛けて飛んで来る。
 そして。
 俺の頬にわずかな傷をつけた後で、奴はゆっくりと、前のめりに倒れ込んだ。



◇魔宮
「まあ、少しはやるようだな(←戦闘の結果、実はこいつもかなりボロボロ)。で、負けるとどうするんだったっけ?」

◇アル
 い、いやじゃ〜(泣)。
「望み通りに舐めてやろうか。あまりの気持ち良さにイッちまうぜ。一生自分を恥じて生きていけるぜ。男でイッたなんてことになったらな」

◇魔宮
「それはお前だろう。人のケツ舐めても平気なんだからよ」

◇アル
「やられるよりはやった方がマシだからな。……負けだよ、負け。もう何でも言うこと聞くよ(諦めたように)。好きなようにしちまえよ」

◇魔宮
 じゃあ、アルの座ってる椅子を思い切り蹴って、
「正座しろ、正座」

◇アル
 くそ〜! 正座する(笑)。

◇魔宮 
「それでどうするんだい、あんた」
 駒林の方を見る。

◇駒林
「僕はさっきも言ったけど、もうハンターだよ。仕事は持って来てるんだろう?」

◇魔宮
 持って来てるんですか?

◇GM
 ううん。こいつらを再結成させるのが仕事みたいなもんでしょうが(笑)。しかもこれに関しては給料なし。

◇魔宮
 ボランティアかよ……(泣)。
「仕事を決めるのはあんただろう、一応リーダーなんだから。そうだよな、リーダーなんだから、仲間まとめるのもあんたの仕事だろう。それともあんた、パソコンの中のイリスちゃんとイチャイチャするのが忙しくて、そんな暇なかったってか」

◇駒林
「……僕では、あんたを止められないな」

◇魔宮
「あんたに止める気がないんだろう」

◇駒林
「それに……僕達はもう『クロック・オブ・アリス』じゃない、新しいチームだろう? 今僕達をまとめるなら、あんただと思う」

◇魔宮
「じゃ、俺がリーダーってことでいいんだな?」と、駒林だけ見て言う(笑)。

◇駒林
 うなずく。

◇魔宮
「だったら、もう1人の居場所を突き止めな。……おい、タクシー野郎」

◇アル
「あいたたた〜」
 足、痺れてる(笑)。

◇魔宮
「チーム名はてめえで考えな」

◇アル
「実はもう、決めてあるんだ」

◇一同
 早〜い(笑)。

◇アル
「『ローズ・マイ・ロード』だ」

◇魔宮
「ふ〜ん。じゃあ、それに決定だな。早速、もう1人の困ったちゃんを探して貰おうか。ねえ、駒林くん?」

◇アル
「(嬉々として)よし、タクシーの契約も切ってくるか」

◇ウォルフ
 急に元気になったな(笑)。

◇アル
 実はもう、タクシー飽きてたんだ。

◇ウォルフ
 渡りに船ってやつか? その割にはごねてたな(笑)。

◇駒林 
 僕は、ウォルフの居場所を調べます。ハンターズ・ギルドのネットから情報を検索して、今受けてる仕事とか調べて、現在の居所を突き止めようとする。

◇GM 
 現在受けている仕事は特にない。で、宿泊しているシティ・ホテルの場所が分かります。

◇ウォルフ
 ホテルを転々としてるからね。

◇駒林
「ギルドの方に報告が入ってた。今のところ仕事は受けていないようだ」

◇魔宮
「取りあえずはそいつを探して、仲間にしなくちゃいけないわけだ」

◇駒林
 プレイヤー、大変だな(笑)。

◇魔宮
 探しに行きます。アルに車を出させる。

◇GM
 では、秋葉原シティホテルという安っぽいところに到着(笑)。

◇アル
「安いところに住んでるんだな」

◇ウォルフ
 転々としてるんだってば(笑)。

◇駒林
「今日はたまたまここだっただけさ。これまでも、色んなところをねぐらにしてたようだから」

◇GM
 現在、時間は夜の10時くらいですよ。

◇ウォルフ
 バーにいるかな。ホテルのじゃなく、外の落ち着いたところに。

◇魔宮
 ホテルの人に聞きます。

◇GM
「いらっしゃいませ」

◇魔宮
「ここにウォルフガングっていう人が泊まってると思うんだけど」

◇GM
「申し訳ございませんが、ご宿泊のお客様に関する情報をお教えすることは出来ません」

◇魔宮
 じゃあハンターの証明書を見せながら、
「実は、凶悪なテロリストの一味だという情報が……(一同 笑)」

◇GM
「(動揺して)そ、そ、そうだったんですか? も、申し訳ございません、ただ今お部屋を……」
 フロントの女性は慌てて部屋を調べ始めますね。

◇ウォルフ
 ひでえ……(笑)。

◇アル 
 でも正解だな(そんなにテロリストにしたいのか、アル?)。

◇GM
「お待たせ致しました。こちら2101のお部屋になります」

◇魔宮
「ああ、ありがとう」

◇ウォルフ
 俺、部屋は上下に二つ取ってるよ。

◇GM
 そうなの? じゃあ、鍵は二つ渡される。2101と2001。
「それから、今はお出かけになっているようですが……」

◇魔宮
「そうですか。分かりました」

◇GM
「あの、他のお客様には……」

◇魔宮
「大丈夫、心配には及びませんよ。それから、帰って来たら相手に気付かれないように、部屋に連絡を入れて下さい」
 部屋の方に行く。どっちに行こうか。上と下だよね?

◇ウォルフ
 爆弾とか仕掛けられた時の対策だからね。普段は上に住んで、下は空き部屋にしてあるよ。

◇アル
 何でそんな面倒なことするの?

◇ウォルフ
 爆風とか炎は上に向かうから、階下に仕掛けられると上が危ないの。だから、俺は下を常に空き部屋にしておいて、安全を確保するの。

◇アル
 身に覚えがあるのか?

◇ウォルフ
 う……うん(笑)。

◇魔宮
 じゃあ、上の階に行きます。

◇GM
 では、部屋の方。明かりとTVが点けっ放しになっていますが、本人の姿はない。

◇魔宮
「留守みたいだな」

◇駒林
「出かけてるって言ってたからね」

◇アル
「こんな部屋に住んで楽しいのかねえ」
 その辺をいじって遊んでる。

◇魔宮
「とりあえず、帰って来るまでのんびり待つか」
 ばふっとソファに座る。

◇GM
 ではウォルフ。夜中の2時頃、君は部屋の鍵を受け取るためにフロントへやって来る。
「あ、お、お帰りなさいませ……(声が震えている)」

◇ウォルフ
 それは……。

◇魔宮
 バレバレじゃねえかよ(笑)。

◇ウォルフ
「ありがとう」
 鍵を受け取ってそのまま上に行き、中に誰かいないかどうか探る。

◇GM
 その間に魔宮くん達のところには連絡が入ります。

◇魔宮
「どうやら来るらしい」
 そう言って2人は隠れさせます。俺はソファに座っていようかな。電気は消しておく。

◇ウォルフ
 電気は点けっ放しで出掛けたんだけどな。とりあえず部屋のある階まで行って、中の気配を探る。誰かいないかな?

◇GM
 では、ここで初めて判定でも行ってみましょうか。
 隠れる側は『2D+体』で判定。『隠密能力』のある魔宮くんは『3D+体』で判定することが出来ます。一方、気付く側のウォルフは『知覚能力』を持っているので、『3D+心』でロールして下さい。
 達成値の高い方が勝ち。達成値が同じだった場合は、ウォルフに気付かれてしまうよ。

◇ウォルフ
 エスパーの『知覚能力』をなめるなよ。

◇アル
 (コロコロ)お、高い。13だ。

◇魔宮
 『隠密能力』なら任せろ。合計15。

◇駒林
 (申し訳なさそうに)7……。

◇GM
 なるほど、一番低いのは7ね(笑)。ウォルフは?

◇ウォルフ
 ふふ、余裕。合計17で、全員に気付いた(笑)。

◇GM
 では、中に人の気配が3つほど感じられますね。

◇ウォルフ
 さて、どうするかな。いきなり《サイコ・スピア》をぶっ放すか、それとも《ファイア・ボール》か……?(一同苦笑)
 いや、しかしそれはまずいよな(笑)。今、命を狙われるようなことはあるんですか?

◇GM
 特に思い当たらないね。今は仕事を受けていないし、前回の仕事も特に命に関わるようなものではなかった。

◇ウォルフ
 それじゃあ、カチャリとドアを開けて、黙って電気を点ける。ソファに座ったりしてるんだよね?

◇駒林
 まあ、気配を消すくらいだから……って、全然消えてなかったけど(笑)。

◇GM
 1人、見覚えのない奴も混じってますね。

◇ウォルフ
 向かいのソファに座る。
「何の用だ」
 そう言いながら、酒の瓶とグラスを取り出して自分だけ飲む(笑)。

◇魔宮
 酒はもう、俺達で開けてるんだけど(笑)。

◇ウォルフ
 な、なに!?

◇アル
 もう、くつろぎまくった後だよ。

◇駒林
 本当に犯罪者のところに来たわけじゃないから、ルームサービスなんかも頼んでたかもね(笑)。

◇ウォルフ
 こ、こいつら……(怒)。

◇魔宮
「(平然と)チームを再編することになった。リーダーの魔宮だ」

◇ウォルフ
「何だこいつは」
 アルに聞く(笑)。

◇アル
「今言ったのが全てと言っちゃあ、全てなんだがな」

◇ウォルフ
「(魔宮を指差して)俺は三流と組むつもりはない。そう言ったはずだ」

◇魔宮
「その三流に負けた奴と組んでたお前は四流ってことか」

◇ウォルフ
 ピクッ。アルを見る(笑)。

◇アル
 口笛吹いてごまかす(一同爆笑)。

◇ウォルフ
 そのまま睨み付ける。辺りの空気もちょっとピリピリと(笑)。

◇魔宮
 こ、こいつ……。

◇ウォルフ
 俺、凶暴ですから(笑)。気をつけた方がいいよ。

◇GM
 周りの電化製品やガラスなんかが音を立ててますね。時々空中に電気が走ったり。

◇魔宮
「……まあ、そういうことだ」

◇ウォルフ
 それはどういうニュアンスの言葉なの?

◇魔宮
 もうチームは決まったんだぞ、って感じかな。確信というか自信というか、高圧的というか(笑)。

◇ウォルフ
「―ひ弱なエスパーが、どうやって大量の人間を殺すか知っているか? ……このホテルにチェックインした時点で、プロパンガスの位置は押さえてある。爆破するのに必要な時間は5、6秒といったところか。俺が脱出するには充分な時間だ。果たしてお前はどうかな?(一同苦笑)」
 ……すみません、危ない奴で(笑)。単に挑発してるんだけどね。

◇魔宮
 そんなことをしたら、当然テロリストと呼ばれることになるんですよね?

◇GM
 もちろん。それはもう立派な無差別大量殺人ですから。

◇魔宮
「残念ながら、テロは許しちゃおけねえ」

◇ウォルフ
「俺の、以前の仕事を聞いていないのか?」

◇GM
 魔宮は聞いていないですね。他の2人は知ってるけど。

◇魔宮
「知らねえな」

◇ウォルフ
 駒林にでも聞いてみろ、という感じでそっちに目を向けて、再び魔宮に視線を戻す。

◇魔宮
 それじゃあ、駒林の方に目を向ける。

◇駒林
「……でも、暗殺者はもう辞めたんだろう」

◇ウォルフ
「ハンターとして人を殺すのも、暗殺者として殺すのも、あまり変わらないよ」

◇魔宮
 では、目線をウォルフに戻して……。(頭を抱える)うう、どうしよう(笑)。

◇GM
 今回、GM以上に悩む魔宮君であった。

◇アル
 って言うか、GM全然喋ってねえし。

◇魔宮
 ……じゃあ、こう言って憐れみの目でウォルフを見る。
「あんたもイリスに依存してただけだったんだな。可哀相にな、母ちゃん亡くしちまってよ」

◇ウォルフ
「母親? イリスに母親を見た覚えはない」
 挑発には乗らずに冷静に答える。

◇魔宮
「じゃあ、あんたは何を見たんだ?」

◇ウォルフ
「妹みたいなものだったよ。……守ってやりたかった。確かに俺は、お前の言う通り四流なのかも知れないな。彼女を守ることが出来なかったから。だから俺は、他の奴と組むことをやめたのさ」

◇魔宮
「……自分が、誰かを守ってやれないから?」

◇ウォルフ
「人の死ぬところは、もう見たくないからな」
 ちなみにこの『人』というのは『知り合い』という意味ね。それ以外は全員『敵』。こいつの判断基準は、『敵』と『味方』にしか分かれてないから(笑)。

◇魔宮
 ……少し笑って、自信に満ちた顔でウォルフを見る。
「大丈夫だ、誰も死なない」

◇ウォルフ
 いきなり信用は出来ないなあ(笑)。
「お前にそれだけの腕があるのか?」
 彼のことは知ってるんですか?

◇GM
 いや、君はまったく知らない。逆に、本部で働いていた駒林は知ってるよ。ギルドの訓練生の中に凄いのがいるよ、という噂が流れてたから。

◇ウォルフ
「貴様、何者だ?」

◇魔宮
 記憶喪失の俺にそれを聞くのか(笑)。
「……俺は魔宮勇樹。ただそれだけだ」

◇ウォルフ
 ……うーん、アルは結構強いからなあ。

◇アル
 どっちも自惚れ屋なだけじゃねえかよ(負け惜しみ)。

◇駒林
 魔宮くんの成績は? トップで卒業とかだったんですか?

◇GM
 そんなレベルじゃなく、歴代何位か、という大変優秀な成績だったね。まあ、おそらくは歴代3位くらいではないかと。

◇駒林
「ギルドで訓練を受けた卒業生の中でもトップ3に入るくらいの実力を、彼は持ってるよ」

◇ウォルフ
「分かってないな。強さじゃないんだよ。……では、問題を出そう」

◇魔宮
 (渋い顔をしている)

◇駒林
 まだ俺に考えさせるのか、って言いたげな顔を(笑)。

◇魔宮
「いいよ、どうぞ。答えてやるよ」

◇ウォルフ
「先程の質問の続きだ。もし俺がテロリストで、プロパンに火を点けたとする。残された時間は5、6秒。お前ならどうする?答えは簡単だ。お前は誰も守れない。お前1人ならば生き残れるかも知れないがな」

◇魔宮
「……その時は何も考えず、お前を殺すよ。お前だけは道連れにしてやる」

◇ウォルフ
 俺の考えに近いな。……ってことは、こいつ危険なんじゃないのか?(一同爆笑)

◇魔宮
 『もう助からない!』っていう局面で自分だけ生き残っても仕方ないからね。

◇ウォルフ
 んー、確かに2人抱えて窓から飛び下りるのは無茶だしねえ。

◇魔宮
 それにここから飛び下りても死ぬだけだと思うんだけど(ここはビルの21階)。

◇ウォルフ
 首を横に振って、
「帰ってくれ」

◇魔宮
「駄目だ」

◇ウォルフ
 じゃあ、ちょっとキレる。周りのガラスが粉々に砕け散る(笑)。

◇GM
 部屋の窓ガラスが、彼の発する力によって一枚残らず砕け散りますね。テーブルの上のグラスや酒瓶も粉々になる。

◇ウォルフ
 冷たい声で、もう一回だけ言う。
「帰ってくれ」

◇アル
 早めに殺した方がいいんじゃねえか、こいつ。(一同爆笑)

◇ウォルフ
 殺すなよ〜(笑)。仮にも昔、仲間だったんだろ〜?(←自分のことは棚に上げている)

◇駒林
 ちょっと待て、みんな冷静か(笑)? もう、かなりヤバい方向に行ってる気がするぞ。うう、キレる、キレれば、キレるとき、うう、どうしよう(笑)。

◇GM
 何を活用してるんだか。みんな平気? っていうか、正気?

◇魔宮
 う〜ん、俺はイリスって人が死んだ事件を詳しく知らないからなあ。

◇駒林
 魔宮の肩に手を乗せて、小声で言う。
「一度、出よう」
 その手が震えてる。ウォルフの怖さは知ってるから。

◇ウォルフ
 敵と見なした瞬間に《サイコ・スピア》を死ぬまでぶちかますからね。この人、気違いだから(笑)。

◇魔宮
 う〜ん……うう〜ん……(悩む)。

◇アル
「お前はまたそうやって破壊衝動に逃げるのか」

◇ウォルフ
 う、痛いところを突かれたな。……収まる。

◇アル
「それじゃ本当に四流になっちまうぞ」

◇ウォルフ
「人は簡単に死ぬんだ。……お前だって、分かっていたじゃないか。何でこんな奴と組んだんだ?」

◇アル
「……」

◇ウォルフ
「お前の話も聞いたよ。タクシー屋になったんだってな。そのままタクシー屋に収まってりゃ良かったのに、何でまた、ハンターになんか戻ったんだ?」

◇アル
「言い逃れのネタ探しはもうやめろよ」

◇ウォルフ
 ストレートな奴だな(笑)。

◇アル
「俺達がここに来た理由も、もう分かってるんだろう? お前には俺達が必要だ。そして、俺達にはお前が必要なんだ」

◇ウォルフ
「……OK、アル。いいだろう。チーム名は? もう、『クロック・オブ・アリス』ではないんだろう?」

◇アル
「新しいチーム名は『ローズ・マイ・ロード』だ」

◇ウォルフ
「『ローズ・マイ・ロード』か。分かった。
 もう一つ。新入りの腕が見たい」

◇魔宮
「いいだろう。何をすればいいんだ?」

◇ウォルフ
「そうだな。(窓を開けて)向こうのビルに、俺の訓練用の的がある。あれを撃ち抜いてみろ」
 (魔宮のキャラクター・シートを覗き込んで)しまった! こいつ、強いぞ(笑)。

◇GM
 では、難易度など設定してあげようか。やっとGMらしいことが出来る(笑)。
 そうだなあ、達成値は20。これを目標に攻撃してね。

◇ウォルフ
 それでもデータ的にはかなり余裕なところが許せないよな。

◇GM
 いいじゃないの。失敗したら恰好悪いでしょ? それに君達だから余裕なのであって、本来20って言ったら、『すごく困難』なんだからね。

◇魔宮
 それじゃ、ランス・UTSを構えて撃つ。(コロコロ)達成値は24。ふふ、余裕で的を撃ち抜く。

◇ウォルフ
「……いいだろう。だが、まだ認めたわけじゃないぞ。
 俺の名は『ライカンスロープ』だ。気をつけて使うことだな」
 そう言ってにやりと笑う。

◇GM
 で、魔宮くん(用意していたメモを渡す)。その時、君はふと奇妙な感覚に陥るのだ……。


 それは、あの奇妙な夢の続きだったのかも知れない。
 俺の前にようやく集まった、3人のハンター達。
 どこかで、会っている気がする。
 失われた記憶の片隅で、何かが俺に訴えかける。
 俺は、奴らを知っている。
  ―だが。
 ならば、奴らはなぜ俺に気付かない?
 それは、奴らが俺を知らないからだ。
 どこかで見知っただけなのかも知れない。仮にも奴らは新宿で一、二を争う有名なハンターだったのだ。
 この奇妙な感覚を、俺は無理矢理心の底に押し込めた。



◇魔宮
 (メモを読んで)……え? いきなりそんなこと言われても……。

◇駒林
 何だ何だ?

◇アル
 変な電波でも感じたんじゃねえの?

◇一同
 毒電波だ(笑)!

◇魔宮
 まあいいや。気を取り直して……。
「改めて自己紹介しよう。俺の名前は魔宮勇樹。ハンドルネームは『ファントム』だ」

◇ウォルフ
「俺の名はウォルフガング・ミューラー。近しい者はウォルフと呼ぶ。もっとも、俺に殺されていった奴らは皆『ライカンスロープ』と呼んでいたがな」

◇アル
「俺はアルカ・ベラ。世間一般では『ザガンの風』と言われて恐れられている凄い奴だ」

◇一同
 自分で言うなよ(笑)。

◇駒林
「山添駒林だ。ネットの中では『ロータス』の名で通っている。それと(AIアンドロイドを指して)こっちは『ノーム』」
 とんがり帽子の小人さんの姿をしてます。

◇GM
 紹介されると、『ノーム』はぴょこんと頭を下げる。

◇魔宮
「よろしくな」

◇ウォルフ
「あ、そうだ。もう一つ頼みがあるんだが……」

◇アル
「まだ何かあるのかよ(笑)」

◇ウォルフ
「この部屋、何とかしてくれ」

◇GM
 そう言えば部屋はボロボロ。まるで本当にテロリストと一戦交えたような状況になってますね。

◇魔宮
「まあ、部屋の方はギルドで何とかしてくれるだろう。連絡しておく」

◇ウォルフ
「で、仕事は?」
 ライターを使わずに煙草に火を点けながら。

◇アル
「そうだな。急な再編成の理由って……」

◇魔宮
「仕事……」
 ちょっと固まる(笑)。
「まあ、仕事というのは他でもない。何でも優秀なハンターがいるから、そのチームを再結成してくれということだった。仕事は終わった(一同 笑)」

◇ウォルフ
「どういうことだ? 俺達にままごとでもやれって言うのか?」
 煙草を魔宮の方に指で弾く(笑)。

◇駒林
 その間にダテさんのところに電話をかけます。

◇GM
 では数コール後に、ダテさんの面倒臭そうな声が返ってくる。
「はい。フレア・ブリット」

◇駒林
「山添です」

◇GM
「ん、ああ……。で、どうなった?」

◇駒林
「チーム『ローズ・マイ・ロード』、結成しました」

◇GM
「おお、そうか。そいつは良かった。ところで、そこに新入りいるか?」

◇駒林
「ええ、魔宮ならそこに」

◇GM
「さっき、ねぐらの鍵を渡すの忘れててな。帰りにここに寄るよう言ってくれ」

◇駒林
「あ、それと……ちょっと、こっちでウォルフとやり合ったので、ひどいことに。いつものようにお願いします」

◇GM
「(溜め息)お前らのチームも、それがなけりゃいいチームなんだがな。ま、とりあえず仲良くやってくれよ。ハンターはチームワークが命だからな。それから、仕事は何件か入ってるから、明日顔だけでも出せよ(電話を切る)」

◇駒林
「……魔宮。ダテさんが、部屋の鍵を渡したいから帰りに寄ってくれと」

◇魔宮
「ああ、分かった」

◇ウォルフ
「……俺の部屋は?」
 俺、ずっとホテル暮らしだったからなあ。前のチームの時も、同じシティホテルに泊まってるってだけだったし。

◇GM
 ちなみに他の2人は?

◇駒林
 ハンターズ・ギルド直営のマンションかな。

◇アル
 ボロ宿。稼ぎが少ないからね。

◇ウォルフ
「この時間じゃ、ホテルも取れない。それにお前ら、このホテルのロビーで何言ったんだ? フロントの奴がカタカタ震えてたぞ」

◇魔宮
「まあ、ちょっとな」

◇ウォルフ
「じゃあ、責任取って部屋を用意しろ。こんな寒空じゃ、とてもじゃないが眠れない」

◇魔宮
「それなら、下の階に移ろうか」

◇ウォルフ
「それは嫌(一同 笑)」

◇魔宮
「じゃあ、取りあえずは俺か駒林のところに泊まればいいんじゃないか?」

◇ウォルフ
 ……そういうんじゃなくて、普通の部屋だい(笑)!

◇魔宮
 わがままな奴だな。

◇アル
 でも、駒林の部屋はちょっと凄そうだよなあ。

◇駒林
 確かにここ半年くらい、部屋はあんまり綺麗じゃなかったけどさ。でも、それはコンピュータ系ので色々埋まってるだけで……。

◇ウォルフ
 ごみ箱の中には、カップラーメンとかレトルト食品の空き箱の間に丸めたティッシュが……(笑)。

◇魔宮
 隣の部屋に行くと、壁から天井までポスターがびっしり……。それもCGで作ったイリスの。

◇駒林
 そ、そんなことするかぁ(笑)!

◇GM
 そこまでいくと、キャラクターとしてここに存在することを否定するぞ、GM権限で(笑)。

◇駒林
 俺は何も言ってないぞ! 無実だ!

◇ウォルフ
 うーん、どうしようかなあ。駒林はイリス殺してるからなあ。

◇駒林
 うぐっ(クリティカルの一言)。

◇ウォルフ
 何となく嫌だから、魔宮のところにしよう。

◇駒林
 ……ところで、さっきから気になってたんだけど、魔宮くんが怪我した時には病院に連れてっていいのかな? それとも、どこか工場に……(笑)。

◇GM
 一応、ちょっとした病院に行けば治療は受けられますよ。彼のように戦闘用とは限らず、サイボーグ化してる人はいますから。義手とか義足とかね。でも、魔宮くんの場合はハンターズ・ギルドの本部でメンテナンスを受けるのが一番だと思うけど(笑)。
 あ、そうだ。言い忘れてたけど、魔宮くんの場合『中傷』と『重傷』で自然治癒が働くのは半分だけです。あとは、修理しないと直りません。

◇魔宮
 何だそりゃ! 聞いてないぞ!

◇GM
 いや、だから言い忘れてたんだってば。

◇ウォルフ
 左半分丸ごとサイボーグだもんな。金のかかりそうな奴。

◇GM
 みんなの持ってる『機械能力』で直すことも可能だよ。

◇魔宮
「よし、とりあえず帰ろう」

◇ウォルフ
 チェックアウトして、ホテルを出て行きます。

◇GM
 ではフロントの女性が君達の姿を見て絶句している。

◇魔宮
「ご協力感謝する。(顔を寄せて小声で)このことはご内密に」

◇GM
「は、はい」
 彼女はカタカタと震えている。

◇ウォルフ
 じゃあ彼女の耳元で囁く。
「忘れないよ」(笑)

◇GM
 彼女はそのままへなへなと床に座り込んでしまいますね。

◇ウォルフ
 あ、まだ精算してないよね? ちょうどいいや、このまま逃げちゃお。
 IDカードを見せながら、「カードはもういいかい?」

◇GM
 彼女はこくこくと頷く。お代はいらないってさ(笑)。

◇駒林
 ひ、卑怯だ……。

◇ウォルフ 
 らっきー。そのまま出て行く。

◇アル
「……結構お茶目ね」

◇駒林
「でも凶悪テロはないだろう、凶悪テロは」

◇ウォルフ
「ある意味似たような惨状だけどな」

◇GM
 で、君達は再びアルの車でフレア・ブリットの方に戻るわけですね? では、店の前に到着します。当然、店はもう閉まっている。

◇駒林
 鍵だけって言ってたし、車の中で待ってようかな。

◇魔宮
 店の中に入ります。

◇GM
 では、入ってすぐのテーブルの上に、鍵と書き置きが無造作においてある(笑)。鍵は2つあるよ。

◇魔宮
 2つ? じゃあ、車に戻ってウォルフに一つ投げてやる。
「多分、お前のだ」

◇GM
 書き置きの方は、ハンターズ・ギルド直営マンションへの地図ですね。

◇魔宮
 そういえば、初めてだもんな。まったく、ひどい扱いだよ。

◇ウォルフ
「しかし『ライカンスロープ』ともあろうものが、何でこんなギルド直営の安マンションに住まなきゃならないんだ」

◇GM
 そのマンションは、フレア・ブリットから車で……(本誌のリプレイを見ながら)約5分。ワンルーム・マンションですね。ちなみにすぐ近くの空き地には、不法投棄のジャンクで建てたと思われるバラックが(ここに住んでる奴の正体が知りたい人は、CHAOS PLAYの本誌を読んでね・)。

◇ウォルフ
「このマンションが思ったより綺麗なのはいいんだが、あのバラックは何だ」

◇GM
 駒林くん、『情報能力』で判定してごらん。

◇駒林
 (コロコロ)ええと、10です。

◇GM
 では、こんなところに住んでいる物好きなハンターがいるという話を聞いたことがあるね。あの土地がTOKYO所有のもので、そのハンターはあの場所を不法占拠しているということも(笑)。ついでに、バラックの中には装甲ジープが隠されているとか何とか。

◇駒林
「(アルを見ながら)ライナー……なんだ」

◇アル
「あんなところに住むほど、俺は落ちぶれちゃいねえぞ」

◇魔宮
「でも、アルが住んでるところもボロいんじゃねえの?」

◇アル
「確かにボロいけど、あれよりはマシ(笑)」

◇駒林
「そういえばあそこの住人、この間雑草を煮込んで食べてたよ」

◇ウォルフ
「(顔をしかめて)……その話はもういい。行こう」(笑)

◇GM
 では、中に入ってくる。駒林の住まいもここでいい?

◇駒林
 いいですよ。

◇GM
 では、魔宮とウォルtが同じフロアで、駒林だけ一階上のフロアだね。

◇ウォルフ
「アルはどうするんだ?」

◇アル
「ああ、俺は魔宮のところに泊めてもらうよ」

◇ウォルフ
 じゃあ部屋に入って行きながら、
「気をつけろよ。アル、ホモだから(一同爆笑)」

◇魔宮
「それは分かってる」
 アルと一緒に入って、ドアを閉める(一同大爆笑)。

◇ウォルフ
 ちょっと驚くけど、『あ、そうかそうか。そういうことなのか』と1人納得して、部屋に入る(笑)。

◇GM
 あ、魔宮とウォルフの部屋には何もないです。ベッドが一つとクローゼット、テレビ、冷蔵庫。それ以外は何もない、殺風景な部屋ですね。鍋や食器類も全然ない。このままじゃとても生活なんか出来ないでしょう。あと、電話は備え付けられています。
 それから、魔宮くんの部屋には君の荷物が運び込んでありました。衣類がちょっとだけ。以上(笑)。

◇魔宮
 それだけかよ。

◇ウォルフ
 財産少ねえな、お前。

◇魔宮
 仕方ないだろ、まだ働いてないんだから。
 荷物を掴んで、クローゼットの近くに放り投げる。
「まあ、しょうがねえな。一緒に寝るか」

◇アル
「シャワー浴びてね(一同大歓喜)」

◇魔宮
「(平然と)ああ、分かった」

◇ウォルフ
 やだな〜、本当にホモみてえ(笑)。

◇魔宮
 とりあえずシャワーを浴びて、さっぱりして出て来る。

◇GM
 こらこら、成年指定にする気か(笑)。このまま行くと違う話になりそうだ。

◇ウォルフ
 でもさ、密かにGMが一番楽しそうだよな(GMは女です、念のため)。

◇アル
 全て冗談です、冗談。分かるかなあ。

◇魔宮
 冗談も何も、すべて普通の日常会話じゃねえかよ(笑)。

◇アル
 そのまま、当然何もしないで寝ます。

◇GM
 はい。というわけで、君達は『ローズ・マイ・ロード』としての最初の一夜を、安らかな眠りのうちに過ごすこととなります。
 君達にとっては、ささいな始まりでしかなかった、この出会いの日を。


 見慣れぬ天井。
 それはいつものことだった。
 どこへ行っても拭い去ることの出来ない違和感。しかし、その違和感でさえ、今夜はなぜか心地いい。
 悪い奴らではなかった。
 アクの強い連中ではある。だが、奴らは確かに一流のハンターだったのだと思う。長い休暇に入っていたとはいえ、奴らから戦いの匂いは消えていなかった。
 思ったよりも、身構える必要はないかも知れない。信頼関係は一朝一夕で築けるものではない。それはこれからの仕事で、少しずつ積み上げていかねばならないのだから。
 隣で、アルが歯ぎしりをする。何の夢を見ているのか、『箸、箸』と騒いでいる様は、何となく笑いを誘った。
 仲間、か。
 そんな言葉を思い浮かべたことが急に恥ずかしくなり、俺は寝返りを打った。
 窓からは、赤く大きな満月。
 その光の中を、何かが横切った。
 必死に翅を動かしながら、ゆっくりと飛んでゆく。
 あれは ―蝶……?
 夢を、見ているのだろうか。
 俺を支配し続けるあの夢を。
 それもいい。今夜は、あの夢を笑い飛ばすだけの気力がある。
 俺は―いや、『魔宮勇樹』という俺は、その夜、生まれて始めた安らかな眠りに就いた。
 月の中を征く一羽の蝶に見守られながら。


 だが、それはほんの休息にすぎなかったのかも知れない。
 俺達を翻弄する嵐が訪れる前の、ほんのちいさな―。
 

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